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治療

先天性グリコシル化異常症
congenital disorder of glycosylation(CDG)
岡本伸彦
(大阪母子医療センター遺伝診療科・主任部長)

 糖蛋白における糖鎖は,蛋白質の機能に重要である.先天性グリコシル化異常症(CDG)は,糖蛋白の糖鎖の合成過程および修飾過程にかかわる遺伝子変異により,糖蛋白の機能不足によって発症する先天代謝異常症である.

●病態

・本項ではPMM2-CDGを中心に記載する.主要な症状としては乳児期からの筋緊張低下,精神運動発達遅滞,特徴的顔貌,皮膚症状,心嚢液貯留などが認められる.

・出生体重は一般と差がないが,哺乳不良,嘔吐,体重増加不良のため,経管栄養を要する例がある.オレンジ皮様の皮膚,殿部脂肪沈着,乳頭陥没などの皮膚所見は診断の参考となる.肝腫大,肝線維症,胆汁うっ滞,肝硬変などの肝病変を伴う例がある.

・原因不明の筋緊張低下乳児でASTやALTが上昇している場合,CDGは要鑑別である.頭部MRIで大脳白質異常,小脳虫部の欠損ないし低形成を認める.

・特徴的合併症として,脳卒中様発作,脳梗塞,脳出血など脳血管系の異常がある.循環器系の合併症として,心膜炎,心嚢液貯留,心筋症,先天性心疾患の例があり,心エコーによる循環器系の評価を行う.内斜視,網膜色素変性,眼振,近視などの眼科的異常がある.

・年齢を経ると,側弯後弯などの脊椎変形,骨量減少,関節過伸展,胸郭変形などの整形外科的合併症を認める.末梢神経障害(四肢筋萎縮進行),二次的な骨格変形(胸椎後弯)が生じる.

・ほかのCDGでは乳児早期てんかん性脳症,免疫異常,骨格異常,難治性下痢などの多彩な所見を認める.

●治療方針

A.CDGの診断

 トランスフェリンを用いて,等電点電気泳動や質量分析法で糖鎖の不足,構造異常を証明する.糖鎖の異常を確認したあとは,該当するタイプの遺伝子解析が必要である.タイプが不明な場合は,次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を考える.

B.治療

 基本的には対症療法しかない.一部のCDGでは糖補充療法が有用である.MPI-

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