診療支援
治療

シトリン欠損症
citrin deficiency
坂本 修
(元 東北大学大学院小児病態学・特命教授)

治療のポイント

・新生児期の遷延性黄疸,思春期以降の高アンモニア血症において積極的に鑑別疾患にあげる.

・幼児期以降は食癖の聴取(高脂肪食を好み,糖質を嫌う)が診断に有用である.

・全年齢を通して高脂肪(特にMCTオイル)・低糖質食が治療に有用である.

・日本先天代謝異常学会では「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019」を出版している.

●病態

・シトリンはミトコンドリア膜に存在するアスパラギン酸・グルタミン酸キャリアであり,欠損症では細胞質内でのNADの枯渇,NADHの蓄積により糖,アミノ酸代謝,尿素回路など代謝障害を生じる.

・シトリン欠損症は年齢依存的に2つの病態をとる(後述).

●治療方針

A.新生児・幼児期(胆内うっ滞期)

 新生児マススクリーニングで発見されるものと,それ以降に遷延性黄疸で発見されるものとがある.胆道閉鎖症や新生児肝炎との鑑別が重要となる.大半の症例は軽快するが,肝不全のため肝移植を要したものがある.

 a)胆汁うっ滞が軽度で体重増加が低調もしくは通常のもの,および総胆汁酸の上昇はあるが凝固因子の低下がないものには下記を用いる.

Px処方例

明治必須脂肪酸強化MCTフォーミュラ(+母乳) 自立哺乳

 b)総胆汁酸の上昇があり,凝固因子の軽度低下があるものには下記を両方用いる.

Px処方例

ウルソ錠(50mg) 1回1/3錠(粉砕) 1日3回

パンビタン末 1回0.25g(製剤量として) 1日2回+ケイツーシロップ 1回1mL(製剤量として) 1日1回 毎日

 c)肝不全の傾向を呈するものについては「急性肝不全」の項()を参照.

B.幼児期から学童期(代償期)

 この時期には「見かけ上健康」とされるが,体重増加不良,易疲労感,低血糖,高脂血症,胃腸障害,慢性肝障害などの非特異的な症状を呈することが多い.それぞれ対症的に治療する.

C.思春期以降(前CTLN2か

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