診療支援
治療

カルニチン回路異常症
carnitine cycle disorders
高柳正樹
(帝京平成大学健康医療スポーツ学部理学療法学科・教授)

●病態

・長鎖脂肪酸をミトコンドリア内へ輸送するカルニチン回路を構成する酵素である,カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1),カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2),カルニチン/アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)およびカルニチンを細胞内に輸送するカルニチントランスポーター(OCTN-2)の先天的な欠損により脂肪酸代謝が十分に行われなくなり,その結果エネルギー産生の低下を引き起こす.

●治療方針

 日本先天代謝異常学会が編集している「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019」に,それぞれの疾患の治療法が詳細に書かれているので必ず参照する.

A.急性期の治療

 ブドウ糖を中心とした輸液,L-カルニチンの投与(OCTN-2欠損症では必須であり大量投与を行う.その他は低カルニチン血症の場合に考慮),高アンモニア血症の治療(フェニル酪酸ナトリウム,安息香酸ナトリウム,アルギニンなど),ミトコンドリアカクテル(各種ビタミン剤など),ベザフィブラートなどの投与を行う.

B.慢性期の治療

 L-カルニチン内服(OCTN-2欠損症では必須であり大量投与を行う.CPT1では不要,長鎖脂肪酸の障害におけるカルニチン投与は世界的にもコンセンサスはない.筆者は血中フリーカルニチン値が15μmol/L以下にならない最小量を投与している),許容空腹時間の厳守,血糖モニタリング,栄養管理(高炭水化物,低脂肪食),中鎖脂肪酸の投与,シックデイの際の早期医療介入,運動制限(登山やマラソンなどのような負荷が長時間続く競技)など,永続的な管理が必要である.

1.OCTN-2欠損症に対して

Px処方例

エルカルチンFF錠 1回30~100mg/kg 1日3回

2.CPT2,CACT欠損症に対して

Px処方例

エルカルチンFF錠 1回2~10mg/kg 1日3回

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