診療支援
治療

副腎白質ジストロフィー
adrenoleukodystrophy(ALD)
大橋十也
(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター遺伝子治療研究部・教授)

●病態

・細胞内小器官であるペルオキシソームに存在するABCD1蛋白をコードするABCD1遺伝子の変異によって発症する,X連鎖性の遺伝性疾患である.中枢神経系の脱髄による神経症状と副腎不全を呈する疾患である.

・発症時期,症状などにより小児大脳型,思春期大脳型,成人大脳型,adrenomyeloneuropathy,小脳脳幹型,アジソン型,女性発症者などに分かれる.

・頻度が高く,小児科医がかかわる可能性の高いのは小児大脳型であり,3~10歳で性格の変化,行動の変化,視力障害,聴力障害,知能障害,歩行障害などで発症し,無治療であれば数年で寝たきりになる.

・ABCD1蛋白はペルオキシソーム内への飽和極長鎖脂肪酸CoAの輸送にかかわっているため,血清の極長鎖脂肪酸が上昇し,これを証明することで診断に結びつく.

●治療方針

A.ロレンツォオイル

 6~8週間投与すると血中の極長鎖脂肪酸は低下する.しかし「副腎白質ジストロフィー(ALD)診療ガイドライン2017」では投与は積極的には推奨されていない.なぜなら生命予後を延ばすというエビデンスもなく,また小児大脳型,思春期大脳型,成人大脳型,adrenomyeloneuropathy,女性保因者のいずれにおいても神経症状の改善は認められていないためである.

B.副腎皮質ホルモン

 すべてのALDの患者に副腎不全は起こりうるので,ACTHやコルチゾールなどの基礎値に加え,迅速ACTH負荷試験など副腎皮質機能の検査は定期的に行い,適切に補充を行うべきである(「副腎クリーゼを含む副腎皮質機能低下症の診断と治療に関する指針2014」などを参照).

C.造血幹細胞移植の適応

(上記のガイドライン参照)

1.未発症例

 6か月ごとの脳MRIにて軽微な異常を認めた段階ですみやかに移植を行う.ただMRIに異常がなくても神経症状,視力障害,聴力障害が出る場合もあるので,神経生

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