診療支援
治療

遺伝性ポルフィリン症
porphyrias
野口篤子
(秋田大学大学院小児科学)

●病態

・ヘム合成にかかわる種々の酵素の異常によって,その中間代謝産物であるポルフィリン体またはポルフィリン前駆物質が蓄積することにより諸症状をきたす.

・急性ポルフィリン症では神経症状や消化器症状が急性~亜急性の経過で出現する.皮膚ポルフィリン症は日光過敏が主で,皮膚に蓄積するポルフィリンの光毒反応により生じる.

・根治治療はなく対症療法が行われる.

●治療方針

A.急性ポルフィリン症

 最初に発作誘因薬剤の有無を確認する.関連サイト(https://www.sakuratomonokai.com)も参照のこと.

 十分なブドウ糖補液は,尿中δ-アミノレブリン酸(ALA)ポルフォビリノーゲン(PBG)の排泄促進およびカロリー補充の点で有用である.肝δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS)のダウンレギュレーションにより症状が緩和される.

 嘔気や疼痛,不眠,高血圧などに対し,制吐薬,鎮静薬,抗けいれん薬,降圧薬などを投与する(モルヒネ,フェンタニル,クロルプロマジン,ジアゼパム,クロナゼパム,β遮断薬など).発作誘発薬は避ける.

 特異的治療であるヘミン製剤(ノーモサング)は,2~3回投与後より血中尿中のPBGが低下,腹痛・嘔気が消失する.頻回のヘミン製剤投与は肝への鉄沈着を招くためフェリチンなども評価する.

 薬物反応性が乏しくかつ神経症状が進行する場合は,肝移植も検討される.日常生活ではストレス,飢餓,過労,感染,無理なダイエットなどを避ける.

Px処方例 下記などを症状に応じて適宜用いる.

➊5~10%ブドウ糖液 1日3,000~4,000mL(成人量) 点滴静注

➋ノーモサング注 1回3mg/kg 1日1回(最大250mg) 生理食塩液100mLで溶解し,30分以上かけ点滴静注 4日間

 血管痛をきたしやすいので,太い静脈や中心静脈カテーテルからの投与がよい.

B.皮膚ポルフィリン症

 ポル

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