●病態
・Menkes(メンケス)病は,X染色体劣性遺伝形式をとる先天性銅代謝異常症である.
・原因遺伝子ATP7A遺伝子の異常により,腸管からの銅の吸収ならびに各組織における銅要求酵素への銅の受け渡しが障害される.
・その結果,中枢神経あるいは結合組織など種々の臓器の銅要求酵素に銅が供給されず,これらの臓器障害が引き起こされる.
・臨床症状と経過の重症度により古典型(重症型),軽症型および極軽症型(occipital horn症候群)に分類される.
・生後2か月以降に治療が開始された古典型症例の予後は不良であり,多くは幼児期・小児期に,肺炎,大出血,膀胱憩室破裂などで死亡する.
●治療方針
A.銅の非経口投与
ヒスチジン銅の皮下注射が現時点での唯一の治療法である.銅として375μg/回を,投与開始時には連日あるいは隔日にて皮下投与を行う.目安は血清銅と血清セルロプラスミン値を正常域まで上昇させ,それを維持することである.血清銅・セルロプラスミン値が正常値に達したあとは,それを維持できるように増量または週1~3回の投与へと調整する.本治療により毛髪異常は改善する.
治療開始が生後2か月以内であれば中枢神経症状や結合織異常はある程度予防することが可能である.治療開始が生後2か月以降になると神経症状は改善せず,結合織異常も出現すると考えられている.
なおヒスチジン銅は現在市販されていないため,各施設で院内製剤として作製する必要がある.作製方法はSherwoodらの方法を参考にする.
B.抗けいれん薬投与
けいれんは90%以上の症例に出現し,難治性であることが多い.抗けいれん薬による治療を行う.バルプロ酸ナトリウムやクロナゼパム,ニトラゼパムなどが有効であったとの報告がある.
C.支持療法
a)膀胱憩室を生じることが多く,尿路感染をきたしやすい.繰り返す場合は抗菌薬の予防内服を行う.
b)摂食障害
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