●病態
・中枢性尿崩症は,下垂体からの抗利尿ホルモン(AVP:arginine vasopressin)の分泌低下によって多尿をきたす疾患である.AVPは視床下部の神経核で産生され,視索上核下垂体路を運ばれて下垂体後葉から分泌される.AVPの産生・輸送・分泌が何らかの原因で低下すると,腎尿細管における尿の濃縮が行われず,低張尿が多量に出る状態となる.
・中枢性尿崩症の大部分は後天的なもので,視床下部・下垂体領域の腫瘍・外傷・炎症・感染症・手術や放射線治療などが原因となる.症状は口渇・多飲・多尿である.自由に飲水ができる場合には血中Naは正常上限に保たれるが,飲水できないと高Na血症を呈して,不機嫌・易刺激性・不明熱・意識障害・けいれんなどをきたす.
・診断は,間脳下垂体機能障害に関する調査研究班報告の「バソプレシン分泌低下症(中枢性尿崩症)の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)」を準用して行う