診療支援
治療

中枢性尿崩症
central diabetes insipidus
伊藤純子
(虎の門病院小児科・部長(東京))

●病態

・中枢性尿崩症は,下垂体からの抗利尿ホルモン(AVP:arginine vasopressin)の分泌低下によって多尿をきたす疾患である.AVPは視床下部の神経核で産生され,視索上核下垂体路を運ばれて下垂体後葉から分泌される.AVPの産生・輸送・分泌が何らかの原因で低下すると,腎尿細管における尿の濃縮が行われず,低張尿が多量に出る状態となる.

・中枢性尿崩症の大部分は後天的なもので,視床下部・下垂体領域の腫瘍・外傷・炎症・感染症・手術や放射線治療などが原因となる.症状は口渇・多飲・多尿である.自由に飲水ができる場合には血中Naは正常上限に保たれるが,飲水できないと高Na血症を呈して,不機嫌・易刺激性・不明熱・意識障害・けいれんなどをきたす.

・診断は,間脳下垂体機能障害に関する調査研究班報告の「バソプレシン分泌低下症(中枢性尿崩症)の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)」を準用して行う.

・まず多尿があって尿浸透圧が低張(<300mOsm/kg)であることを確認する.水制限試験あるいは高張食塩水負荷試験を行い,血清Na・浸透圧が上昇しているにもかかわらず多尿が持続して尿濃縮がみられず,AVPが低値であれば中枢性尿崩症と診断しうる.

・脳腫瘍を含む器質的疾患の鑑別のためにも,下垂体前葉ホルモンの評価や頭部MRI検査は必須である.

●治療方針

 治療の基本は,AVPアナログであるデスモプレシン投与を行って尿量をコントロールすることである.デスモプレシン点鼻製剤には点鼻液とスプレー2.5(2.5μg/L噴霧)があり,0.5~10μg/回を1日2~3回投与する.

 デスモプレシン口腔内崩壊錠は,点鼻製剤と同等の有効性を示し,内服が簡便で携行が容易である.60・120・240μg錠があり,これを1日2~3回投与する.多尿・口渇があれば追加投与を行って差し支えない.最も大きな副作用は水中毒に

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