診療支援
治療

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
hypogonadotropic hypogonadism
田中敏章
(たなか成長クリニック・院長(東京))

●病態

・思春期の二次性徴の始まりと成熟は,視床下部から分泌される黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)が下垂体からのゴナドトロピン(LH,FSH)の分泌を刺激し,それが性腺(男子は精巣,女子は卵巣)に働いて性ホルモン(男子はテストステロン,女子はエストロゲン)の分泌を促進することにより起こる.

・低ゴナドトロピン性性腺機能低下症は,思春期年齢になっても二次性徴が発現しない病態で,中枢の性腺刺激ホルモン系の機能が低下することにより発症する.低ゴナドトロピン性性腺機能低下症には,成長ホルモン分泌不全性低身長症(GHD:growth hormone deficiency)に伴う複合型下垂体ホルモン欠損症(下垂体機能低下症),間脳・下垂体腫瘍,遺伝性のKallmann(カルマン)症候群や単独ゴナドトロピン欠損症などがある.

・遺伝性の原因に関しては,多くの遺伝子異常が報告されている.Kallmann症候群では,無嗅症/低嗅症,停留精巣,小陰茎を伴う.

●治療方針

 小児期からの治療では二次性徴の発現・成熟させるだけでなく,成人身長の正常化,妊孕性の獲得も重要な目的である.男子においては精子獲得のためhCG-rFSH療法を要する.女子においては,卵子はすでに卵巣内に存在し卵子形成のための治療は不要である.女性の妊娠目的の卵成熟のための治療にはhCG-rFSH療法が必要であるが,産婦人科で行うことなので割愛する.

 思春期の伸びを健常小児と同じだけ伸ばすことができるような治療法が確立されていなかったが,近年少量の補充量より開始することで思春期の伸びが大きくなることが報告されてきたので,今までより早期に治療を開始することにより,思春期遅発による心理社会的問題の発生を予防することが期待されている.

A.小学生のうちに診断されている場合

 男子でGHDに伴う複合型下垂体ホルモン欠損症や,無嗅症や小陰茎な

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