●病態
・Prader-Willi(プラダー・ウィリー)症候群(PWS)は,染色体15q11-13領域の遺伝子異常に起因し,父由来の欠失が70%,母性片親性ダイソミーが25~30%,刷り込み変異が1~3%である.母体の高齢化に伴い,母性片親性ダイソミーが増加している.
・種々の奇形徴候(小さな手足,アーモンド様の眼,躯幹部中心の肥満など),内分泌学的異常(低身長,肥満,糖尿病,性腺機能低下症など),精神・神経学的異常(筋緊張低下,知的障害,不適応行動など)を示す.
・臨床的特徴は,年齢ごとにその臨床像が異なることである.新生児期には著明な筋緊張低下がみられ,これによる哺乳障害や体重増加不良がみられる.また陰嚢低形成,停留精巣を認める.乳児期には筋緊張は改善するが,精神運動発達遅滞を呈する.幼児期から過食傾向が出現し,肥満傾向が顕著となる.
・年齢に伴って高度肥満,糖尿病を呈する.思春期には二次性徴発来不全,特徴的な頑固な性格を示し,不適応行動がみられる.成人期にはパニック障害などの精神症状や食行動の異常が顕著になる.
●治療方針
医学的な介入として食事・運動療法,低身長に対する成長ホルモン(GH)補充療法,性腺機能低下症に対する性腺ホルモン補充療法,性格障害や行動症状に対する心理療法,薬物療法があげられる.側弯症や内反足などの整形外科的症状や肥満,糖尿病,行動症状などの合併症が多彩であり成人期への移行困難も問題の1つである.
A.食事療法・運動療法
1.新生児期・乳児期
大部分の新生児が哺乳不良を呈し,経管栄養を要することがある.哺乳不良の期間は患児により異なるが,1歳を過ぎることは少ない.8~10kcal/身長(cm)/日の栄養で体重コントロールを行う.
2.幼児期から思春期
一般的な小児のエネルギー摂取量を遵守しても容易に肥満をきたすため,体重維持には10kcal/身長(cm)/日を目
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