●病態
・先天性甲状腺機能低下症は,何らかの原因により,先天的に生体に必要な甲状腺ホルモン作用が不足した状態である.頻度は約4,000出生に1人である.
・重症例では治療開始の遅れによって精神運動発達に大きな影響を及ぼすが,治療により予後が改善する.そのため新生児マス・スクリーニングの対象疾患となっており,「先天性甲状腺機能低下症マス・スクリーニングガイドライン(2014年改訂版)」(日本小児内分泌学会)が出されている.
●治療方針
新生児マス・スクリーニングあるいは臨床症状から先天性甲状腺機能低下症を疑った場合,TSH・FT3・FT4の血清濃度測定により診断を行い,甲状腺ホルモン補充療法開始の判断を優先する.
また治療開始前に,臨床症状チェックリスト項目の有無の確認(遷延性黄疸,便秘,臍ヘルニア,体重増加不良,皮膚乾燥,不活発,巨舌,嗄声,手足の冷感,浮腫,小泉門開大,甲状腺腫),身体計測,X線による大腿骨遠位端骨端核の有無,問診(家族歴,特に母親の甲状腺疾患やヨウ素曝露),体制が整っていれば甲状腺エコー検査や尿中ヨード測定を実施する.
ここでは以下のように重症とそれ以外とに分け,記載する.
A.治療開始
1.重症例
①症状チェックリスト2項目以上,②大腿骨遠位端骨端核未出現,③FT4低値,TSH 30μU/mL以上,①~③のうち1つでも満たす場合を重症とする.すみやかに甲状腺ホルモン補充療法を開始する.
Px処方例
チラーヂンS薬散 1回10μg/kg(最大15μg/kg)(成分量として) 1日1回
2.重症例以外
FT4正常範囲内の場合,高TSH血症に対する治療開始基準のエビデンスはない.定期的な血液検査を実施し,TSHの推移を確認する.TSH 10μU/mL以上が持続する場合は中等症と考え,治療開始が推奨されている.また半年経過しても5μU/mL以上の場合には6か月から治療を開始す
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