診療支援
治療

甲状腺機能亢進症
hyperthyroidism
高橋郁子
(秋田大学大学院小児科学・講師)

治療のポイント

・原因としてバセドウ病が最も多いが,ほかの甲状腺中毒症を呈する疾患との鑑別を忘れない.

・バセドウ病の治療は「小児期発症バセドウ病診療のガイドライン2016」を参照する.

・抗甲状腺薬チアマゾール(MMI)が第1選択である.

・抗甲状腺薬には無顆粒球症や肝障害などの注意すべき副作用があり,定期的な検査を行う.

・発熱,咽頭痛の出現時には無顆粒球症の可能性を考慮し,すみやかに受診することを勧める.

●病態

・甲状腺ホルモンの合成・分泌が亢進した状態を甲状腺機能亢進症という.主な疾患はバセドウ病である.まれな疾患として中毒性多結節性甲状腺腫や中毒性甲状腺腺腫,TSH産生腫瘍などがあげられる.

・一方,ホルモン産生亢進を伴わず甲状腺濾胞の破壊による甲状腺ホルモン過剰状態もあり,無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎,薬剤誘発性などが相当する.甲状腺中毒症とは過剰な甲状腺ホルモンによって代謝と活動性が亢進し,その結果引き起こされる臨床症状を指し,前述のすべての病態で生じうる.

・バセドウ病の診断と治療はこれらの疾患との鑑別を念頭に進めていく.診断は「バセドウ病の診断ガイドライン」(日本甲状腺学会,2013年6月24日改定)に基づき行う.

・診断は下記1.の1つ以上に加えて2.のa)~c)を有する場合,「確からしいバセドウ病」として治療を開始してよい.

1.臨床所見

 a)頻脈,体重減少,手指振戦,発汗増加などの甲状腺中毒所見

 b)びまん性甲状腺腫大

 c)眼球突出または特有の眼症状

2.検査所見

 a)遊離サイロキシン(FT4),遊離トリヨードサイロニン(FT3)のいずれか一方または両方高値

 b)TSH低値(0.1μU/mL以下)

 c)TSH受容体抗体(TRAb,TBII,TSAb)陽性

 d)甲状腺摂取率,シンチグラフィー(診断に苦慮する場合のみ)

●治療方針

 バセドウ病の治療には抗甲状腺薬による薬物療法

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