●病態
・脂質異常症は,高LDL-C血症,高TG血症,低HDL-C血症などの病態の総称である.小児脂質異常症の診療において一番大事なことは,遺伝性脂質異常症であるかどうかの診断である.
・高LDL-C血症:LDL受容体経路にかかわる遺伝子の変異による家族性高コレステロール血症(FH:familial hypercholesterolemia)ホモ接合体(HoFH),FHヘテロ接合体(HeFH),ABCG5/8に変異を有するシトステロール血症などである.高LDL-C血症により,若年齢からの動脈硬化症の発症および進展が問題となるため早期診断,早期治療が重要である.
・高TG血症:リポ蛋白リパーゼやアポリポ蛋白CⅡなどの遺伝子変異による原発性高カイロミクロン血症.
・低HDL-C血症:ABCA1遺伝子変異によるタンジール病,LCAT遺伝子変異によるLCAT欠損症.
・低LDL-C血症:MTP遺伝子変異による無βリポ蛋白血症.アポリポプロテインB,PCSK9遺伝子変異による低βリポ蛋白血症.
・こういった遺伝子変異による脂質異常症は,それぞれのリポ蛋白が極端な値をとることで知られている.
●治療方針
A.脂質異常症
治療の基本は食事療法,運動療法を含めた生活習慣の改善である.
1.食事療法
1日の摂取エネルギーは,肥満でなければ各年齢,体格に応じた通常量とする.脂肪エネルギー比20~25%,炭水化物エネルギー比50~60%,飽和脂肪酸はエネルギー比で7%未満とし,トランス脂肪酸の摂取は減らす,コレステロールは200mg/日に制限する.
2.運動療法
少しきついと感じるレベルの有酸素運動を1日30分以上,できれば毎日行うとしている.
上記の生活習慣の改善でも脂質異常症が正常化(LDL-C<140mg/dL,TG<150mg/dL,HDL-C≧40mg/dL)しない場合,遺伝性脂質異常症を疑う.遺伝性脂質
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