診療支援
治療

低血糖,インスリン過剰症
hypoglycemia,hyperinsulinism
安達昌功
(昭和大学病院小児科)

●病態

A.ブドウ糖産生の低下によるもの

・頻度的には幼児期のケトン性低血糖症が最多である.

・内分泌疾患(下垂体機能低下症・副腎機能低下症)や先天性代謝異常症に伴う場合もある.副腎機能低下症では,ヒドロコルチゾン治療中であっても,ストレス時には低血糖となる危険性がある.

・多くの場合,血中・尿中のケトン体が陽性となる.脂肪酸代謝異常症などでは,ケトン体陰性の場合もある.

B.ブドウ糖消費の亢進によるもの

・先天性高インスリン血症,インスリノーマ,ダンピング症候群,糖尿病治療中などのインスリン低血糖が該当する.

・原則として,血中・尿中のケトン体は陰性となる.

●治療方針

A.救急処置:低血糖の是正

 10%または20%ブドウ糖を使用する.

Px処方例

20%ブドウ糖注 1~2.5mL/kg 4~5分かけて緩徐に静注

 急速投与や高濃度のブドウ糖液投与は,過度の浸透圧の変化を引き起こす可能性があるので禁忌である.

 血糖が一時的に上昇しても経口摂取が不能と予想されれば,入院のうえブドウ糖の維持輸液(糖濃度5~7.5%)と血糖のモニターを行う.

B.低血糖の原因が不明の場合の注意点(初めての低血糖の際など)

 Critical sampleとして以下の検体の採取に努め,後日の診断に役立てる.

 血中・尿ケトン体,血液ガス,アンモニア,インスリン,遊離脂肪酸,コルチゾール,成長ホルモン,総カルニチンと遊離カルニチン,アシルカルニチン分析,アミノ酸分析,ACTH・乳酸・ピルビン酸,尿中アミノ酸分析,尿中有機酸分析.

 フルクトース代謝異常の可能性を考え,グリセオールの使用は避ける.

C.副腎ホルモン補償療法としてコートリル内服中の場合の注意点(先天性副腎過形成症,頭蓋咽頭腫術後,下垂体機能低下症など)

 低血糖の治療と並行して,ストレス量のヒドロコルチゾンを投与する.

Px処方例

ソル・コーテフ注 幼児:1回50mg,

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