診療支援
治療

必須脂肪酸欠乏症
essential fatty acid deficiency
惠谷ゆり
(大阪母子医療センター消化器・内分泌科・主任部長)

●病態

・脂質の加水分解によって生じる脂肪酸のなかで,体内で生合成できないものを必須脂肪酸とよぶ.脂肪酸は炭素原子の結合部の二重結合の数によって飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸に分けられ,さらに多価不飽和脂肪酸は最初の二重結合がn末端から何番目にあるかによってn-3(ω3)系,n-6(ω6)系,n-9(ω9)系に分類される.

・このうちn-3系の脂肪酸はα-リノレン酸から,n-6系の脂肪酸はリノール酸から合成されていくが,このα-リノレン酸とリノール酸をヒトは生合成することができないため,この2つが狭義の必須脂肪酸ということになる.しかしこれらの脂肪酸が不足すると,その代謝産物であるn-3系のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA),n-6系のアラキドン酸(AA)なども欠乏状態になるので,これらの脂肪酸も必須脂肪酸に準じたものとして理解しておいたほうがよい.

・血清脂肪酸分画でエイコサトリエン酸とエイコサテトラエン酸(アラキドン酸)の比(T/T比)が0.4以上の場合に必須脂肪酸欠乏と診断できる.

・必須脂肪酸欠乏症の症状としては皮膚の乾燥,皮疹,脱毛,免疫力の低下,血小板減少,肝機能障害などがあり,小児ではさらに成長障害や発達障害を引き起こすことがある.また,必須脂肪酸が欠乏する病態では脂質摂取そのものが非常に少ない状態になっているため,カロリー不足による体重増加不良や脂溶性ビタミン欠乏症をきたす可能性があることにも注意が必要である.

●治療方針

 必須脂肪酸欠乏に陥る原因は,脂肪の摂取不足もしくは吸収障害に大別される.原因別に治療方針を以下に述べる.

A.摂食障害や嚥下障害などのため脂肪摂取量が非常に少ない場合

 食事摂取量を増やすことが容易ではない場合は,経管栄養あるいは経静脈栄養を考慮する.ただし必須脂肪酸欠乏症になるほどの低栄養障害状態の患者に急激

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