診療支援
治療

猫ひっかき病
cat scratch disease
星野 直
(千葉県こども病院感染症科・部長)

●病態

・グラム陰性小桿菌であるBartonella henselaeが原因の人獣共通感染症.ノミが媒介し,健常な猫,犬などのペットの血液に寄生するB.henselaeが受傷を契機にリンパ・血行性に感染し発症する.

・ひっかき傷,咬傷などの受傷後1~3週間で所属リンパ節の腫脹(上肢の傷の場合は主に腋窩,下肢の傷の場合は主に鼠径部)が出現する.

・猫,犬の眼脂や唾液を介した感染も証明されており,受傷は感染の成立に必須ではない.

・典型例ではリンパ節腫大(多くは有痛性)のみを呈し良好に経過するが,一部の症例では膿瘍化する.

・非典型例では,パリノー結膜腺症候群(耳前リンパ節の主張を伴う結膜炎)や視神経網膜炎を呈する.また,肝臓脾臓型では肝臓や脾臓に肉芽腫や膿瘍を形成し,不明熱の原因となる.急性脳症などの神経学的合併症を認めることもある.

・診断には血清抗体価が用いられることが多いが,血液や局所の検体を用いたPCR法による検出も行われる.培養も可能だが,分離までに1~2週間を要する.

●治療方針

 健常児が本症を発症した場合,多くは自然治癒する.抗菌薬無投与でも1~2か月で治癒するため,抗菌薬療法は必ずしも推奨されない.有痛性のリンパ節の腫脹に波動を伴うような場合には,穿刺排膿が有用である.抗菌薬の効果については明らかではないが,in vitroではマクロライド系薬,フルオロキノロン系薬,ST合剤など多くの薬剤が感性を示す.

 リンパ節の縮小にアジスロマイシンの5日間投与(わが国では未承認)が有用とする報告もあり,またリンパ節腫脹以外の症状を呈するような重症例に対し,テトラサイクリン系薬,フルオロキノロン系薬,アミノグリコシド系薬,リファンピシンなどが用いられる.免疫不全患者に対しては,原則として全例抗菌薬を投与する.

Px処方例

ジスロマック小児用細粒 1回10mg/kg(成分量として)(最大1日

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