診療支援
治療

エルシニア感染症
Yersinia infection
武田修明
(たけだ小児科・院長(岡山))

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[感]感染性胃腸炎:5類

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●病態

・エルシニア感染症とは,一般に腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)と仮性結核菌(Yersinia pseudotuberculosis)感染症を指している.

Y.enterocolitica感染症のほうが一般には多く,胃腸炎症状が主体である.Y.pseudotuberculosis感染症は腹部症状を伴う,発熱性・発疹性疾患であるが,一部に川崎病の症状や急性腎不全の合併,まれに回盲部病変などを認めることがある.

Y.pseudotuberculosis感染症の多彩な臨床像に,スーパー抗原活性を有する外毒素YPM(Y.pseudotuberculosis-derived mitogen)との関連性が注目されている.汚染された水や食物を摂取して感染する.

●治療方針

 通常自然治癒するので,輸液などの対症療法が主体でよい.抗菌薬は通常必要ないが,敗血症が疑われる場合や基礎疾患のある児が罹患した場合は,抗菌薬投与が必要である.合併症には十分に注意する必要がある.

A.Y.enterocolitica感染症

‍ Y.enterocoliticaはβラクタマーゼを産生し,ペニシリン系抗菌薬などには感受性が低い.第三世代のセフェム系やニューキノロン系抗菌薬などを使用する.

Px処方例

ロセフィン注 1回60mg/kg 1日1回 点滴静注

B.Y.pseudotuberculosis感染症

‍ Y.pseudotuberculosisは,マクロライド系以外の抗菌薬には高い感受性を有している.多くは重篤感があり入院治療が望ましい.重症例では抗菌薬投与が必要となる.川崎病と類似の症状をきたすこ

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