●病態
A.無気肺
・無気肺はさまざまな原因により肺胞への空気の流れが低下,遮断されて容量が減少し虚脱した状態である.
・肺区域に留まる程度から全肺に至るものまであり,原疾患の状態により決定される.
・小児期では感染を契機に無気肺が生じやすいと考えられる.
・症状を伴わないことも多いが,肺炎に伴う無気肺では胸膜痛を伴うことがある.
・重症度に応じて低酸素血症が生じる.
1.肺実質への外部からの圧迫
・胸水,気胸,胸腔内腫瘍,横隔膜ヘルニアなどがある.
2.気管支内の閉塞
・気道外の病変:リンパ節腫脹,腫瘍,心肥大などがある.
・気道内の病変:急性気管支炎,肺炎など下気道感染症,気管支喘息,気管支拡張症,術後状態などによる分泌物(粘液栓を含む),異物,肉芽腫性組織,腫瘍,結核などがある.
3.呼吸に支障をきたす状態
・神経筋異常,骨の変形,痛みや麻痺による呼吸運動の制限,横隔膜の運動不全,サーファクタント欠乏による呼吸抵抗の増大などがある.
B.中葉症候群
・右中葉に無気肺を呈する状態,または慢性炎症が存在する状態を中葉症候群という.
・左舌区に同様の所見を認めるものを舌区症候群という.
・原因として考えられるのは,中葉を走行する気管支は上葉や下葉への気管支よりも細く長く,分岐部が鋭角であり喀痰の排出が困難であること.また,多数のリンパ節が周囲に存在することも影響する.
・中葉は発育が不十分なことも多く,生体防御力がほかの部分と比べ低下傾向にある.
・左舌区に生じた舌区症候群と併せて,中葉舌区症候群という.
●治療方針
原因疾患に対する迅速な診断と治療が重要であり,同時に無気肺を改善させる治療を考慮する.診断は胸郭運動の制限や呼吸音の減弱が参考になるが,最終的には胸部X線が診断の根拠となる.疑わしい場合には画像診断で確認する.
A.原因疾患治療
小児では下気道感染症,喘息発作の頻度が高い.両者とも通常は過剰分泌に由来