診療支援
治療

肥厚性幽門狭窄症
hypertrophic pyloric stenosis
名木田 章
(水島中央病院小児科(岡山))

治療のポイント

・硫酸アトロピン(以下,硫アト)静注とニトログリセリン(以下,NG)経皮投与の併用が第1選択的治療である.

・嘔吐の頻度,経口摂取量,体重の増減,小腸内液量が治療効果を評価する簡易な指標である.

・硫アト経口投与変更後は2週間内服させる.

●病態

・幽門筋内コリン作動性神経系が活発な哺乳行為によって強く刺激され,幽門筋の過剰収縮が誘発される.この過剰収縮が持続してれん縮状態になり,幽門筋の作業肥大と幽門の通過障害を起こす.

・通過障害の進行により特徴的な噴水状嘔吐がみられ,小腸での消化吸収活動が低下して脱水および体重減少を呈していく.胃酸喪失による低Cl性アルカローシスは特異的病状である.

・肥大した幽門筋のれん縮で幽門筋内腸管神経線維が消退し,幽門筋細胞表面ムスカリンM3受容体機能が低下していく.細胞質内にある一酸化窒素受容体機能は残存する.

・このれん縮状態が解除されると,2日以内に上記のムスカリンM3受容体機能が回復し,2週間以内に腸管神経線維が再分布する.

●治療方針

 繰り返す嘔吐を呈する生後3か月までの乳児に,超音波検査で肥厚した幽門筋(厚さ4mm以上)がみられた場合に診断する.血液検査で電解質異常が認められた場合には輸液療法を行い,補正後すみやかに内科的治療を行う.

A.脱水とアルカローシスの補正

 初期輸液を行い,排尿を確認したら維持輸液に変更する.少なくとも嘔吐消失24時間後までは維持輸液を続ける.

Px処方例 アルカローシスがみられた場合には下記➊を,アルカローシスがない場合には➋を使った初期輸液後に➌の維持輸液に移行する.

➊希釈生理食塩液(生理食塩液:5%ブドウ糖液=3:2) 25mL/kg/時 持続点滴静注

➋ソリタ-T1号注 25mL/kg/時 持続点滴静注

➌ソリタ-T3号注 100mL/kg/日 持続点滴静注

B.内科的治療

1.嘔吐持続期間

 利尿の指標

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