診療支援
治療

新生児消化管閉塞
intestinal atresia・stenosis
黒田達夫
(慶應義塾大学小児外科学・教授)

●病態

・先天性の消化管閉鎖および狭窄(閉鎖および狭窄を合わせて閉塞という).

・消化管通過障害による胆汁性嘔吐,腹部膨満とこれに起因する下記病態の併発.

 a)脱水やアシドーシスの進行

 b)腹満による呼吸障害

 c)近位拡張腸管の穿孔,穿孔性腹膜炎

・病態を評価するうえで注意すべき点を以下に述べる.

 a)閉鎖の部位:遠位小腸の閉鎖では嘔吐の発現が遅れる場合がある.胎便栓症候群やHirschsprung(ヒルシュスプルング)病との鑑別が問題になる.多発閉鎖の場合もある

 b)腸管捻転・絞扼・壊死の有無

 c)低出生体重や心大血管奇形など合併奇形の有無

●治療方針

A.初期治療

 呼吸・循環の安定を確保する.静脈アクセスを確保し,生直後であればブドウ糖輸液もしくは細胞外液型輸液を行う.低血糖に注意する.保温をする.

 胃管の挿入・留置により消化管内容をドレナージする.

B.手術

 保存的治療の選択肢はない.呼吸・循環の安定が確保できれば,早期に手術を行う.ただし,さらに重篤な病態を合併している場合には,初回手術としてより侵襲度の低い手術を選択し,多期的に消化管閉鎖の修復を行う.

1.消化管閉塞以外の病態合併がない場合

 閉塞部腸管を適宜切除・吻合し,一期的に修復する.多発閉鎖の場合は吻合が複数になることがある.

2.穿孔性腹膜炎を併発している場合

 腹腔内を洗浄,ドレナージし,初回手術では穿孔部もしくはその近位側をストーマとする.抗感染治療を行い,腹膜炎の治癒後にストーマを落とし,遠位側腸管と吻合して消化管を修復する.

3.合併奇形のある場合や低出生体重児の場合

 基本的には一期的に閉塞部近位・遠位の腸管を吻合して消化管の修復を行うが,重篤な合併奇形があり全身状態が悪い場合や,極・超低出生時体重の場合は縫合不全の危険が高い.そのため初回手術では閉塞部近位側をストーマとして,全身状態の改善と成長をはかり,二期的に消

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