●病態
・小児で最も頻度の高い急性腹症であり,学童期以降に多く,乳幼児では比較的まれである.発生機序としては,虫垂内腔の閉塞をきっかけとした細菌の侵入,炎症の惹起がいわれており,閉塞をきたす要因として糞石・リンパ濾胞の増大や虫垂の屈曲などがある.
・病理学的にカタル性,蜂窩織炎(蜂巣炎)性,壊疽性に分類され,強度の炎症が持続すると穿孔をきたす.
・従来,急性虫垂炎は緊急手術を要する代表的疾患であったが,近年診断技術や抗菌薬の進歩により内科的治療の果たす役割が大きくなっている.
・新たな治療方針とともにその適切な適応を示すため,2017年に日本小児救急医学会より「小児急性虫垂炎診療ガイドライン」が策定・公開された.
●治療方針
A.診断
1.症状
早期には心窩部の不快感,腹痛,食欲不振があり,時間とともに限局した右下腹部痛や微熱を呈する.さらに穿孔例や腹膜炎症例では,下腹部全体の痛み,高熱,しぶり腹などがみられる.
2.身体所見
限局した腹痛と筋性防御の診断が重要であり,丁寧な触診が求められる.代表的圧痛点として,McBurney(マックバーニー)点(臍と右上前腸骨棘を結ぶ線上で右1/3の点),Lanz(ランツ)点(左右上前腸骨棘を結ぶ線上の右1/3の点)がある.またBlumberg(ブルンベルグ)徴候や筋性防御は,炎症の前腹壁腹膜への波及を示す腹膜刺激症状である.
3.血液検査
発症後1日以上経過していれば,白血球の増多,核の左方移動に加えてCRPの上昇がみられることが多い.発症から短時間ではCRPの上昇は認めないか,ごく軽度である.
4.画像検査
成人領域ではCTを撮影する場合が多いが,小児では被曝や造影剤アレルギーの観点から可能な限り超音波検査で診断する.超音波所見は手術所見や病理所見と整合性があり,病型や治療方針決定に汎用される.しかし,腹部所見が強いのにもかかわらず超音波で虫垂が同定で
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