●病態
・血漿蛋白が消化管内腔へ過剰に漏出し,低蛋白血症をきたす症候群である.乳び胸水・腹水,脂肪便による必須脂肪酸欠乏,低Ca血症(テタニー)や微量元素欠乏,低ガンマグロブリンによる易感染,長期的には成長障害が生じうる.
・漏出の原因として,①リンパ管系の異常,②腸血管透過性の亢進,③消化管粘膜上皮の炎症があるが,重複する場合も多い.
1.リンパ管系の異常
・リンパ管の閉塞や中心静脈圧の上昇による腸管リンパ管圧の上昇〔先天的な腸管リンパ管低形成・拡張症,腹部リンパ管腫瘍や炎症,サイトメガロ感染症,右心不全,Fontan(フォンタン)術後など〕.長鎖脂肪酸は吸収経路が腸管リンパ管を介し,内圧を上昇させるため漏出を悪化させる.
2.腸血管透過性の亢進
・粘膜の破綻のない腸管粘膜の血管透過性の亢進〔セリアック病,Ménétrier(メネトリエ)病,膠原病,先天性・続発性の腸管細胞のヘパラン硫酸欠乏など〕.
3.消化管粘膜上皮の炎症
・腸管粘膜の炎症(炎症性腸疾患,消化管ポリポーシス,GVHDなど).
●治療方針
原因となる基礎疾患の治療が原則である.同時に低蛋白血症に起因する症状の対症療法を重症度に応じて行う.栄養状態が悪く,経口・経腸栄養で症状が悪化する場合には高カロリー輸液を行う.
また特殊な病態として,Fontan手術後では副腎皮質ステロイドなどの抗炎症薬と中心静脈の減圧による治療法が中心であるが,確立されたものはない.
A.食事療法
高蛋白・低脂肪食が基本である.リンパ管系の障害には長鎖脂肪酸を制限し,門脈を介する中鎖脂肪酸(MCT)を勧め,市販の特殊ミルクMCTフォーミュラ(明治)や成分栄養剤に変更または併用する.一方,必須脂肪酸は長鎖脂肪酸であるため経静脈的に補充が必要である.
B.薬物療法
1.成分栄養剤
浸透圧が高く下痢をしやすいため,半分の濃度から開始する.
Px処方例 下記のいずれか
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