●病態
・消化に必要な消化酵素の欠損症など,消化・吸収ができずに下痢などが遷延するものを吸収不全症候群とよぶ.
・消化酵素欠損症や微絨毛封入体病など先天性のもののほか,乳児下痢症が遷延し小腸粘膜障害をきたした結果生じる腸炎後症候群などの2次的なものがある.
・体重増加不良など慢性の症状を認める場合は,吸収不良症候群も念頭におき炭水化物,脂肪,蛋白質の消化・吸収能を確認する.
●治療方針
根本的な治療は病気により異なるが,まず脱水の治療を進めながら栄養管理を進める.経腸的に栄養を摂取することが大切で,それぞれの栄養素を消化しやすく調節した成分栄養剤などを用いる.ただし経腸摂取が不可能な場合は,中心静脈栄養(TPN)を用いる必要がある.
消化酵素の欠損症や微絨毛封入体病など先天的なものでは,生後数日以内に水様性の下痢を呈する.吸収不全症候群の最も重要な症状は脱水症のほか,栄養障害,成長・発達障害などである.症状が遷延するとビタミン・微量元素などの欠乏による貧血や免疫力の低下から,難治性の皮膚炎や重篤な感染症を呈する.
A.初期および栄養管理
1.初期管理
脱水,電解質異常や代謝性アシドーシスの補正を行う.経口補液が第1選択であるが,経口摂取が不良の場合や重度の脱水症状を認める場合は経静脈輸液を行う.
2.中心静脈栄養(TPN)
先天性消化酵素欠損症,微絨毛封入体病,短腸症候群,消化管アレルギーなどの重症例で低栄養状態から早期に回復が望めない状態ではTPNを併用する.絶食にて長期間TPNを施行する場合は,ビタミン,微量元素,必須脂肪酸などの定期的補充が必要である.
B.吸収不全栄養素別の治療
1.糖質吸収不全症
澱粉は膵アミラーゼによりグルコースおよびオリゴ糖と二糖類に,ラクトースはラクターゼによりグルコースとガラクトースに,ショ糖はスクラーゼとイソマルターゼにより果糖とグルコースに分解される.グ
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