診療支援
治療

急性肝炎
acute hepatitis
村上 潤
(鳥取大学医学部附属病院小児科・講師)

●病態

・急性肝炎は肝臓の炎症であり,肝病理像としては肝小葉を中心とする肝細胞の巣状壊死,腫大,類洞内への遊走細胞の増加,Kupffer(クッパー)細胞の腫大,門脈域への炎症細胞浸潤などがみられる.

・成因は肝炎ウイルス,肝炎ウイルス以外のウイルス,薬剤,循環不全など多彩である.肝炎ウイルスにはA~E型肝炎があり,A・E型が糞口感染,B・C・D型は経血液感染である.

・食欲不振,倦怠感,腹痛,嘔吐,下痢,発熱,頭痛など非特異的な症状を呈するが,肝脾腫,褐色尿,白色便,黄疸は肝疾患を示唆する所見である.黄疸はA型肝炎で特徴的とされるが,6歳未満では10%と低頻度であるので注意する.

・急性肝炎は基本的に自然治癒することが多いが,B型肝炎の一部やC型肝炎では慢性肝炎に進展する.

●治療方針

 最も重要なことは,急性肝不全に進展するか否かを判断することである.後述の「専門医へのコンサルト」にあげたトランスアミナーゼ値,凝固検査,ビリルビン値に注目し,重症化の徴候を見逃さないようにする.これらの数値の改善が確認できれば,急性肝炎の極期が過ぎたと判断できる.

 肝機能障害が6か月以上遷延する場合は慢性肝炎と定義されるが,初診時に急性肝炎か,慢性肝炎経過中の急性増悪かを判断するのは容易ではない(「慢性肝炎」,「急性肝不全」).

A.一般的な急性肝炎治療

 急性肝炎は重症化しなければ,特別な治療は不要で自然治癒する.臥床安静により肝血流の増加を促し,肝障害の治癒を促す.肝臓以外の臓器障害や全身性疾患が存在する場合は,それら基礎疾患の治療を行う.

B.B型急性肝炎,C型急性肝炎

 「B型肝炎治療ガイドライン(第3.1版)」(日本肝臓学会)では,B型急性肝炎は一般に自然軽快する疾患であり,治療は不要とされるが,劇症化が危惧される場合に核酸アナログによる治療が考慮される(「急性肝不全」).一方,「C型肝炎治療

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