●病態
・正常肝ないし肝機能が正常と考えられる肝に肝障害が生じ,初発症状出現から8週以内に高度の肝機能障害によりプロトロンビン時間(PT)が40%以下またはINR値1.5以上となる病態.肝性脳症Ⅰ度までの「非昏睡型」,昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症を呈する「昏睡型」に分類される.
・小児では肝性脳症の評価が困難で,あやしても泣き続ける易興奮性が肝性脳症の症状であることがある.
・初発症状出現から昏睡Ⅱ度以上の肝性脳症が出現するまでの期間が10日以内の「急性型」,11~56日以内の「亜急性型」,8週以降24週以内の「遅発性肝不全(LOHF:late onset hepatic failure)」に分類される.
●治療方針
肝再生が促進されるよう体内環境を整えると同時に,合併症を最小限にする必要がある.肝ミトコンドリア機能回復のためにL-カルニチン,ビタミンカクテルを投与し,感染に対して抗菌薬,抗ウイルス薬,抗真菌薬の投与を行う.原因が特定された際には直ちに疾患特異的な治療を開始するが,半数以上が成因不明であることから診断にこだわらず,病態を的確に把握し治療につなげることが重要である.
A.初期治療
非昏睡型でも急速に昏睡型に移行することがある.血液検査(AST/ALT,直接/総ビリルビン比,PT-INR,BUN,血清フェリチン,AFPなど)により,肝障害と肝再生の状態を把握する.また腹部超音波検査にて肝萎縮の進行,腹水の増加,門脈の逆流の有無に注意する.
ビタミンK 1.0mg/kgを静注し,PT-INRが改善するかどうか評価する.ブドウ糖主体の高カロリー輸液と経腸栄養を併用する.分枝鎖アミノ酸製剤の投与は,高アンモニア血症の原因となるため使用しない.
B.免疫抑制療法
フェリチンの異常高値,血球貪食症候群,自己免疫性疾患が疑われる場合には,感染徴候がないことを確認後,ステロイド・パルス療法ある