●病態
・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease)は,成人と同様に今や小児の慢性肝疾患の原因として最も多い疾患である.
・NAFLDの重症度は幅広く,比較的予後良好と考えられる非アルコール性脂肪肝(NAFL:nonalcoholic fatty liver)から,肝硬変へ進展しうる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)までを包括する.
・NAFLDは肝臓におけるメタボリックシンドロームの表現型と考えられる.インスリン抵抗性はNAFLD,とりわけNASHの発症における基本的な病態である.
●治療方針
すべての小児NAFLDにおいて,食事の見直しと運動量の増加による生活習慣の改善が第1選択として推奨される.しかし患児が食事と運動を遵守することは,しばしば困難である.
A.生活習慣の改善
体脂肪の減少のために糖質を含む飲料をとらないようにし,中等度~強度の運動を増やし,スクリーンタイムを1日2時間以内に制限することが推奨される.
B.薬物療法
成人では2型糖尿病,高コレステロール血症,高血圧を合併するNASHに対して,それぞれチアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン),HMG-CoA還元酵素阻害薬およびエゼチミブ,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の投与が推奨されている.さらにビタミンEの投与がNASHの肝酵素,肝組織ともに改善させることが報告されており,適宜追加することが推奨されている.
一方,現在使用できる薬物または補助食品は,大多数の小児NAFLD患者において有効性が証明されたものはなく,NAFLDの治療として勧められていない.ビグアナイド薬(メトホルミン),常用量のウルソデオキシコール酸は成人でも推奨されていない.
■専門医へのコンサルト
・小児では遺伝性疾患や先天代謝異常症に伴って,脂肪肝を呈する症例がしばしば経験される.特
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