治療のポイント
・小児の肺動脈性肺高血圧症(PAH)の管理については,日本循環器学会と日本肺高血圧・肺循環学会の合同で発表された「肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)」の「小児における肺高血圧症」の項を参照のこと.
・PAH治療に用いられる薬剤には,一般的治療薬とPAH特異的治療薬がある.
・特異的治療薬は作用機序の異なる3系統の薬剤,エンドセリン受容体拮抗薬(ERA),ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害薬/可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬,プロスタサイクリン製剤に大別される.これら特異的治療薬は第1群のPAH患者にのみ適応があり,ほかの臨床グループ(第2~5群)に属する患者には適応がない.
●病態
・PAHは,特発性または二次性に,毛細血管の手前にある肺細小動脈に機能的および器質的な閉塞が生じることで,肺血管抵抗が進行性に上昇し右心不全に至る疾患である.血行動態上,安静時の平均肺動脈圧(mPAP)25mmHg以上かつ肺動脈楔入圧15mmHg以下と定義される.肺高血圧症臨床分類(Nice 2018)では,第1群に分類される.
・小児期に発症するPAHは成人期にみられるPAHと共通点も多いが,差異も指摘されている.小児では特発性/遺伝性PAH(IPAH/HPAH)と先天性心疾患に合併するPAH〔Eisenmenger(アイゼンメンゲル)症候群を含む〕が大半を占める(「Eisenmenger症候群」→).以下,小児のIPAH/HPAHを中心に述べる.
・PAHの症状は息切れ,動悸,胸痛,疲労感,失神など非特異的である.初期では無症状あるいは強い運動時のみ症状が出現するが,進行すると軽い運動や安静時にも症状が発現する.身体所見にはⅡ音肺動脈成分の亢進,三尖弁閉鎖不全症に伴う汎収縮期雑音,重症例では頸静脈怒張,肝腫大,顔面や下腿の浮腫,末梢冷感などがみられる.
・小児IP
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