●病態
・完全大血管転位症(TGA)は,心房-心室関係は一致しているが心室-大血管関係が不一致(右室-大動脈,左室-肺動脈)の先天性心疾患で,全先天性心疾患の5%を占める.
・心室中隔欠損(VSD:ventricular septal defect)や肺動脈弁狭窄(PS:pulmonary stenosis)の合併の有無により,3型に分類される(図1図).
・TGAにおいては,体静脈血は,右房-右室-大動脈へ流れ,肺静脈血は左房-左室-肺動脈と流れる並列循環のため,生存のためには心房心室内あるいは大血管レベルで体静脈血と肺静脈血の混合が必須となる.
・生直後からチアノーゼ,多呼吸,哺乳不良,肝腫大,尿量低下などの心不全症状がみられる.
●治療方針
基本的な治療は外科手術である.
A.外科手術前内科治療
心房間交通狭小のためチアノーゼが強い場合は,経皮的バルーン心房中隔欠損裂開術(BAS)を新生児期に行う.
動脈管開存の血流短絡を維持して左室圧を保つためにプロスタグランジンE1(PGE1)を使用する〔lipo-PGE1(リプル)5ng/kg/分かアルプロスタジルアルファデクス(プロスタンディン)50ng/kg/分で開始〕.
心不全があれば利尿薬(ラシックス,アルダクトンA),強心薬(ドパミン,ホスホジエステラーゼ阻害薬)などを使用する.
B.病型に応じた手術法
Ⅰ型では左室圧が低下する前に生後2~3週で,Ⅱ型では1~3か月で大動脈スイッチ手術(ASO:arterial switch operation)を行う.左室圧が低下した症例では,肺動脈絞扼術+Blalock-Taussig(ブラロック・タウシッヒ)短絡術(BTS)を施行後,左室/右室圧比>0.7をめどにASOを行う.ASOは大動脈と肺動脈基部で切断し,右室-肺動脈,左室-大動脈と吻合し,冠動脈を新しい大動脈基部に移植する手術である.
関連リンク
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