治療のポイント
・内臓錯位症候群の多くは胎児診断が可能である.診断がつき次第,母体を専門施設に紹介して出生後の迅速な外科治療に備えることが望ましい.
・単心室症例では,Glenn(グレン)およびFontan(フォンタン)手術に向けて,肺血流量を適切に調整するとともに,肺動脈に狭窄や変形を起こさないことが重要である.
・段階的外科治療により多くの単心室症例が救命可能となったが,遠隔期にFontan術後症候群とよばれる全身合併症が発症し,予後は良好とはいえない.
●病態
・胎生初期の原始結節において体の左右軸が決定する過程,もしくはその情報が伝達する過程に異常が生じた結果,胸腹部臓器の左右がランダム化する疾患群.
・両側が右側の構造となる右側相同(無脾),両側が左側の構造となる左側相同(多脾)と,それらが混合した非定位が存在する.
・すべてを合わせると,先天性心疾患の約1~2%を占める.
A.心臓大血管の病変
1)右側相同:右胸心,単心房,右室型単心室,共通房室弁,房室弁閉鎖不全,肺動脈狭窄/閉鎖,両大血管右室起始,総肺静脈還流異常,両側上大静脈,両側洞房結節,重複房室結節など.
2)左側相同:単心房,完全型/不完全型房室中隔欠損,一側心室低形成,房室弁閉鎖不全,左室流出路狭窄,奇静脈接合を伴う肝部下大静脈欠損,両側上大静脈,洞房結節低形成もしくは欠損,完全房室ブロック,冠静脈洞欠損,大動脈縮窄,肺高血圧など.
B.心臓外の病変
1)右側相同:両肺右肺,対称肝,右胃,無脾,腸管回転異常,腎および尿管の異常,気道線毛運動異常(慢性副鼻腔炎,慢性気管支炎),末梢血赤血球Howell-Jolly(ハウエル・ジョリー)小体,免疫異常(肺炎球菌,インフルエンザ桿菌,大腸菌による敗血症),腎および尿管の異常など.
2)左側相同:両側左肺,正中肝,多脾,胆道閉鎖,肝外門脈閉塞による門脈体静脈短絡,腎および尿管
関連リンク
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