診療支援
治療

川崎病性心血管障害
cardiovascular lesions after Kawasaki disease
鮎澤 衛
(日本大学小児科学・准教授)

治療のポイント

・川崎病は現在年間約1万5千人以上の罹患者があり,その2~3%に後遺症として冠動脈瘤が合併する.

・冠動脈瘤は,合併後1~3か月の最大内径で予後がほぼ決まり,内径8mm以上のいわゆる巨大冠動脈瘤は高率に血栓閉塞による心筋梗塞を発症するので,十分な抗凝固療法が不可欠である.

・内径8mm未満であっても,6mm以上の場合には抗凝固療法を行うべきとする意見が多い.

・内径5mm未満では長期的には退縮し正常化することが多く,抗血小板薬で管理するが,時に狭窄が進行して心筋虚血を起こす例もあるので,核医学検査,MRIによる心筋灌流の評価も必要により行って,慎重に管理する.

●病態

・川崎病は乳幼児に好発する全身性の血管炎であり,特有の急性期の主要症状を呈して発症し,多くの場合,急性期症状は免疫グロブリン大量静注療法によって数日で改善する.しかし適切な治療後も,一部の例では冠動脈瘤や拡大性病変を合併する.

・一般に発病1か月を過ぎても残存する場合には後遺症として,その後長期にわたり治療や生活管理を必要とする.

●治療方針

A.回復期以後1年(2回目の冠動脈画像評価)まで

 従来,冠動脈の拡大性病変は,最大内径の絶対値によって拡大あるいは小瘤,中等瘤,巨大瘤に分類される.

 いずれの病変でも急性期からの治療で消炎薬として投与しているアスピリンを,そのまま1か月以降も抗血小板薬として3~5mg/kgを1日1回投与で継続する.巨大瘤や中等瘤で多枝病変の場合や,血栓を形成しやすい球状形態の瘤にはワルファリンを併用する.特に発症3か月頃までは血小板数やフィブリノゲンの増加など凝固系の亢進がみられ,瘤内に血栓を高率に形成するので心筋梗塞発症の多い時期であり,併用が勧められる.

 ワルファリンの効果は成人同様に個人差が大きく,通常は1日0.1mg/kg,1日1回で投与するが,PT-INR(プロトロンビン時間国

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?