診療支援
治療

von Willebrand病
von Willebrand disease(VWD)
志田泰明
(奈良県立医科大学小児科学)

●病態

・フォン・ヴィレブランド病(VWD)はフォン・ヴィレブランド因子(VWF:von Willebrand factor)の量的,質的な欠損や欠乏により,出血症状を呈する疾患群である.

・量的異常(低下:タイプ1,完全欠損:タイプ3)あるいは質的異常(タイプ2)に分類される.タイプ2はVWF機能障害の種類により,さらに2A,2B,2M,2Nのサブタイプに分類される.

・血小板粘着凝集障害による皮膚粘膜出血を主症状とするが,特にタイプ2Nや3では二次的な第Ⅷ因子(FⅧ)の低下から凝固障害による深部出血も認める.

●治療方針

 止血困難時や観血的処置時には止血療法を行う.①非特異的な止血補助治療(トラネキサム酸,エストロゲン,フィブリン糊など)と,②VWFやFⅧ濃度を上昇させる特異的治療〔酢酸デスモプレシン(DDAVP),VWF含有第Ⅷ因子濃縮製剤(FⅧ/VWF製剤)〕がある.③血小板機能を低下させる解熱鎮痛薬などは可能な限り避ける.

A.抗線溶薬

 トラネキサム酸(トランサミン)は,プラスミノーゲンを抑制することで止血栓が強固になることが期待される.特に口腔内出血で有効である.尿路出血では凝血塊による尿路閉塞のリスクがあり禁忌である.

 経口摂取が不能な場合には,静脈注射で1回10mg/kgを1日3回投与する.投与期間は通常3~7日である.腎臓で代謝されるため,腎機能障害を認める患者では減量が必要である.

Px処方例 タイプ1 VWD,口腔内出血,1歳児に対して下記を用いる.

トランサミンシロップ 1回1mL(50mg) 1日3~4回(最大1日2,000mg) 3日間

B.酢酸デスモプレシン(DDAVP)

 DDAVPは抗利尿ホルモンの合成アナログで,血管内皮細胞に貯蔵されているVWFの放出を促す.DDAVP投与後30分以内に血中のVWFおよびFⅧ濃度の上昇を期待するが,効果には個人差があるた

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