治療のポイント
・小児のリンパ腫は正確な診断と標準的治療により,80%以上の長期生存が期待できる.
・成人の場合とは異なり発症時に急速な経過をたどるaggressive lymphomaの症例が多く,診断に至るまでの間の全身管理,治療開始後の合併症管理,抗がん薬・ステロイドによる多剤併用化学療法が実施可能な小児血液がん診療施設にすみやかに紹介し,診断から治療まで一貫して行う.
●病態
・わが国の小児においてリンパ腫は悪性疾患の7~8%を占め,白血病,脳腫瘍,神経芽腫に次ぐ頻度である.
・成人と同様に欧米に比べてHodgkin(ホジキン)リンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)は少なく,非Hodgkinリンパ腫(NHL)が約90%を占める.
・NHLのなかでは成熟B細胞リンパ腫〔Burkitt(バーキット)リンパ腫(BL),びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B cell Lymphoma)〕,リンパ芽球性リンパ腫(LBL:lymphoblastic lymphoma),未分化大細胞型リンパ腫(ALCL:anaplastic large cell lymphoma)の順に多く,これらのaggressive lymphomaがNHLのほとんどを占める(図1図).
・基礎疾患に合併してリンパ腫を発症することはリンパ腫全体のなかではまれであるが,リンパ腫に自己免疫疾患や血球貪食症候群などを合併することは珍しくない.節外症状と併せ,多様な症状からリンパ腫を鑑別診断にあげることが重要である.
A.診断のポイント
・小児のリンパ腫は成人のそれと比較して節外病変を有する場合が多く,初発時はcommon diseaseと疑われる症状しかない場合が多い.咳嗽・喘鳴が主訴で喘息と思われていたが,縦隔・頸部腫瘤が急速に増大して呼吸困難に至る症例,腹部の膨満が急速に増悪し