診療支援
治療

脳腫瘍
brain tumor
香川尚己
(大阪大学脳神経外科学・講師)

●病態

・小児がんのなかでは白血病に次いで固形腫瘍の約20%を占める.WHO分類では120種類以上に分類され,多くの希少がんが混在した疾患群である.

・症状は腫瘍の増殖速度や大きさ,発生母地により変わるが,脳腫瘍による中枢神経の症状は頭蓋内圧亢進症状と局在神経症状に大別できる.頭蓋内圧亢進症状は腫瘍によるmass effectによるもの,髄液循環路遮断に伴う水頭症によるものなどがある.局所神経症状に関しては,脳の機能局在により腫瘍の発生母地が関係する.その他,てんかん,精神症状,内分泌障害(尿崩症や成長障害)などが起こりうる.

・多くの小児脳腫瘍は原因が不明なものが多いが,大規模な遺伝子解析研究やゲノム解読により特異的な遺伝子異常を指摘されているものもあり,新しいWHO分類では病理診断に加えて分子分類が採用されているものもある.

・脳腫瘍を合併しやすい疾患としては,Li-Fraumeni症候群,Lynch症候群,rhabdoid tumor症候群,Turcot症候群,Gorlin症候群などのpredisposition症候群,神経線維腫症1型や2型,結節性硬化症,von Hippel-Lindau症候群などの神経皮膚症候群が知られている.

●治療方針

 乳幼児の初発症状は他の疾患と区別がつかない場合が多く,鑑別診断として脳腫瘍を念頭におきながら,診断・治療を進めることが何より重要である.頭蓋内圧亢進症状を示す場合,脳ヘルニアを起こし急速に状態が悪化することがあるため,精査も治療可能な専門施設において進めるのが望ましい.疾患ごとに予後や治療反応性,腫瘍発生部位などにより治療方針が異なるため,正確な診断を下すことが肝要である.

 治療方針の選択においては神経機能の改善および温存とともに,長期的な視点が重要である.治療は手術および化学療法や放射線療法の組み合わせで行う.経験豊富な脳神経外科医と

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