●病態
・胎児性神経網膜由来の悪性腫瘍である.13番染色体の長腕のバンド14(13q14)に存在する網膜芽細胞腫遺伝子(RB1遺伝子)の異常により生じる.
・RB1遺伝子は,がん抑制遺伝子であり細胞周期の制御など細胞の分裂増殖に重要な役割を担う.2対の遺伝子の双方に異常が起こり,その機能が欠失して発症する(Knudsonの2ヒット説).
・遺伝性例では,RB1遺伝子異常が受精時に胚細胞レベルで起こり(生殖細胞系列変異),両眼性が多く,全身の細胞に遺伝子異常をもち,二次がんを発症するリスクが高い.
・非遺伝性例では,受精後に体細胞レベルで遺伝子異常を起こし(体細胞変異),片眼性が多く,二次がん発症は一般人と変わりない.
A.疫学
・小児がんの2.5~4%を占め,15,000~30,000出生に1人の頻度で発症し,5歳までに95%が診断される.
B.症状
・腫瘍が小さいうちは無症状で,腫瘍がある程度大きくなって発症する.
・わが国の網膜芽細胞腫全国統計によれば,初発症状の頻度は白色瞳孔60%,斜視13%,結膜充血5%,視力低下2%,眼瞼腫脹1%,眼球突出0.5%.白色瞳孔,斜視が多い.
C.診断
・眼底検査によって,典型的な石灰化を伴う白色隆起病変が確認されれば,臨床診断で治療方針を決定してよい.
・典型的な眼底所見を示さない場合や,中間透光体の混濁により眼底検査が行えない場合には画像検査を用いる.
・超音波断層検査,CTにおける腫瘍の確認と石灰化の検出,MRI検査による腫瘍確認は診断の補助となる.
・特に眼球温存治療を考慮する場合には,MRI検査によって視神経浸潤,脈絡叢浸潤,眼球外浸潤の有無を検索し確認する.
D.予後
・眼球内腫瘍として発見される場合が多いため,先進国では5年生存率95%以上,10年生存率90%以上が達成されている.
・小児血液・がん学会の「小児がん診療ガイドライン2016年版」において網