診療支援
治療

サイトカイン療法
cytokine therapy
仁谷千賀
(大阪市立総合医療センター小児血液腫瘍科・医長)

A.分類と薬理作用

 すべての血球成分は造血幹細胞から多段階的に分化して発生し,この過程において種々のサイトカイン(造血刺激因子)を必要とする.造血刺激因子のうち,現在国内でよく使用されるのは,①赤芽球系細胞の分化・増殖に関与する赤血球造血刺激因子(ESA),②顆粒球系細胞の分化・増殖に関与する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),③巨核球の分化・増殖に関与するトロンボポエチン(TPO)の3種類である.

 最近では,細胞の誘導・遊走に関与するサイトカイン(ケモカイン)の受容体拮抗薬が開発され,自家末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員促進の補助薬として承認された.

B.赤血球造血刺激因子(ESA)製剤

1.適応

 透析導入前および透析中,CAPD(連続携行式腹膜透析)中の腎性貧血,未熟児貧血,自己血貯血,骨髄異形成症候群に伴う貧血に適応がある.

2.副作用・禁忌

 高血圧,頭痛,血栓症,赤芽球癆など.ESA製剤に対する過敏症のある患者では禁忌である.

Px処方例 下記を症状に応じてそれぞれ用いる.

 (未熟児貧血に対して)

➊エスポー注 1回200IU/kg 週2回 皮下注

 (保存期慢性腎疾患の腎性貧血に対して)下記➋➌のいずれかを用いる.

➋エスポー注 1回100IU/kg 週1回 皮下注

➌ネスプ注 1回0.5μg/kg(最大30μg) 2週間に1回 皮下注または静注

C.顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)製剤

1.適応

 同種・自家の造血幹細胞の末梢血中への動員,造血幹細胞移植後の好中球の増加促進,がん化学療法による好中球減少症,HIV感染症の治療に支障をきたす好中球減少症,骨髄異形成症候群に伴う好中球減少症,再生不良性貧血に伴う好中球減少症,先天性・特発性好中球減少症,免疫抑制療法(腎移植)に伴う好中球減少症に適応がある.

2.副作用・禁忌

 頻度の高いものとして背部痛,骨痛

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