診療支援
治療

Alport症候群
Alport syndrome
中西浩一
(琉球大学大学院育成医学(小児科)・教授)

●病態

・Alport(アルポート)症候群は進行性の遺伝性糸球体疾患であり,末期腎不全に進行する症例が多い.

・古典的には進行性の遺伝性腎症(しばしば腎炎ともよばれる)に難聴を伴う症候群を指すが,近年ではⅣ型コラーゲン遺伝子バリアントによるものとするのが一般的である.

・約8割がX連鎖型であるが,常染色体劣性・優性のものもある.頻度は約50,000出生に1人との報告がある.

・病理的に菲薄基底膜病を示すことが多い良性家族性血尿の一部は,Ⅳ型コラーゲン遺伝子バリアントにより,病態生理的にはAlport症候群といえる.

●治療方針

 現時点では疾患特異的治療はなく,対症療法が中心である.腎保護薬なしでの末期腎不全進行への自然歴は,X連鎖性男性患者で25歳までに50%,42歳までに90%とされる.

A.保存期

 アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の腎不全進行抑制効果を示唆する報告があり,第1選択と考えられる.ただし一般的にACEIやARB使用中は容易に脱水から腎機能低下を引き起こすので,水分が十分摂取できないときは中止するなどの指示が重要である.

Px処方例

ロンゲス錠 1回0.07~0.4mg/kg 1日1回(最大量20mg)

 少量で開始し,副作用に注意しながら増量する.催奇形性があるので,妊娠可能年齢になった女児には十分に説明を行い,挙児希望がある場合は投与を中止する.

B.腎代替療法

 Alport症候群患者の透析導入後および腎移植後の予後は,他疾患に存在する腎予後に影響する併存合併症が少ないために良好である.

 血液透析ではAlport症候群に特異的な注意事項はない.腹膜透析では血管基底膜への影響により被嚢性腹膜硬化症が増加するのではないかという可能性を論じた報告があるが推測の域を出ず,大規模データの予後結果をふまえると,腹膜透析を避ける根拠には

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