●病態
・Dent(デント)病は尿細管性蛋白尿(低分子蛋白尿,特に尿中β2ミクログロブリン著明高値),高カルシウム(Ca)尿症,腎結石/腎石灰化を特徴とするX連鎖遺伝疾患である.通常男性が発症するが,まれに女性患者も存在する.
・約60%の症例の責任遺伝子はCLCN5であり,近位尿細管などのエンドソーム膜に存在するClC-5をコードする(Dent disease-1).一方,約15%の症例はOCRL遺伝子異常による(Dent disease-2).残りの約25%の症例の責任遺伝子はいまだ不明である.
・これらの異常により,近位尿細管におけるエンドサイトーシスの機構が障害され,著明な低分子蛋白尿が出現する.高Ca尿症の機序は明確ではない.
・欧米からの報告では30~50歳までに30~80%の男性患者が末期腎不全に至るが,わが国では少なく,比較的臨床症状が軽いようである.
●治療方針
Dent病において,腎機能障害の進行を抑制するための確立した治療法はない.したがって以下は推奨される治療ではなく,検討してもよい治療である.末期腎不全に至った患者は,腎移植のよい適応と考えられる.
A.高Ca尿症を是正するための治療
Dent病においてサイアザイド系利尿薬が尿中Ca排泄を低下させるのに有効とされるが,そのことが腎結石/腎石灰化や腎機能障害の進行を抑制することにつながるかどうかは不明である.大規模コホート研究の結果,腎石灰化は腎機能障害の進行に関連しないと報告されている.サイアザイド系利尿薬を使用するとしても,脱水,低カリウム血症,またそれによる筋れん縮などの副作用が報告されており,十分注意する必要がある.また,塩分制限は尿中Ca排泄を抑制する効果があり,十分な水分摂取とともに腎結石/腎石灰化の進行抑制のために検討してもよい.食事中のCaを制限することは骨病変を悪化させる可能性があり,推奨されな
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