診療支援
治療

女性化乳房
gynecomastia during prepuberty and puberty
生水真紀夫
(千葉大学大学院生殖医学・教授)

●病態

A.概要

・女性化乳房は,エストロゲン作用により乳腺組織が良性の増殖を示すものである.乳頭を中心とする円盤状で弾性硬の乳腺組織を触知する.増殖の初期には痛みを伴うことが多い.思春期では男児の50~60%に女性化乳房がみられる(思春期女性化乳房).発症は12~14歳に多く,身長の急伸と一致する.多くは1年以内に症状(乳房の増大や疼痛)の進行が止まり,2年以内に寛解する.

・幼児期~前思春期に女性化乳房を発症することはまれである.副腎皮質徴候(adrenarche,6~7歳にみられる)に一致して発症した場合には,アロマターゼ遺伝子の機能獲得変異による遺伝性女性化乳房の可能性がある.

B.診断

・思春期の女性化乳房の多くは,一過性で治療を必要としない.この生理的(一過性)女性化乳房との鑑別が大切である.

・二次性に女性化乳房をきたすものとして,染色体異常〔Klinefelter(クラインフェルター)症候群,Swyer(スワイヤー)症候群など〕,酵素欠損症(21-水酸化酵素欠損症,17α-水酸化酵素欠損症など),アンドロゲン不応症,精巣腫瘍,Peutz-Jeghers(ポイツ・ジェガーズ)症候群,無精巣症,甲状腺機能亢進症,薬(シメチジン,GH製剤)などがある.

・特発性のものとして遺伝性女性化乳房症がある.前思春期~思春期に両側性に発症し,常染色体優性の遺伝性を示す.血中エストラジオールが高値のことが多いが,基準範囲にあっても本症を否定することはできないことに注意する.エストラジオール/テストステロン比>10が参考になる.遺伝子診断により診断を確定する.

●治療方針

 二次性女性化乳房では,原疾患の管理と治療を行うが,それだけでは女性化乳房の改善が望めない症例もある.

 思春期(一過性)女性化乳房では,治療は不要である.しかし1年を超えても縮小し始めないものや,17歳を超えて持続する例では,

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