診療支援
治療

急性脳症
acute encephalopathy
高梨潤一
(東京女子医科大学八千代医療センター小児科・教授)

治療のポイント

・臨床経過・予後の異なる症候群が存在し「小児急性脳症診療ガイドライン2016」に診療のフローチャート,治療の推奨度が示される.

・初発神経症状の多くはけいれん重積・遷延状態であり,適切で迅速な薬物治療と全身管理が重要である.

・ステロイドパルス療法は,ANEに対し早期の施行が推奨される.AESDには施行しない選択肢も取りうる.MERS典型例には施行する必要はない.

・脳低温・平温療法の有効性に関する明確なエビデンスはない.

●病態

・急性脳症は「小児急性脳症診療ガイドライン2016」で「感染に伴いJCS 20以上(GCS 10~11以下)の意識障害が急性に発症し,24時間以上持続する」と定義された.

・臨床経過・予後の異なる症候群の集合体であり,その病態として①代謝異常〔特にミトコンドリアのエネルギー産生障害,Reye(ライ)症候群など〕,②高サイトカイン血症〔急性壊死性脳症(ANE)など〕,③興奮毒性〔けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)など〕,④その他〔可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)など〕が想定される.

●治療方針

 急性脳症の初発症状として頻度の高いけいれん重積・遷延状態に対する加療とともに,適切な全身管理・支持療法がすべての脳症症例に重要である.

A.けいれん重積・遷延状態への対応

 けいれん重積・遷延状態に対して,けいれん持続時間に応じた適切で迅速な薬物治療が必要である.急性脳症の診断には,けいれん後の意識状態の評価が重要であり,必要以上の抗けいれん薬の投与を行わない.

1.経静脈的治療法

Px処方例 第1選択として,下記➊,➋のいずれかを用いる.1回の静注で発作収束しない場合,5分後に同量以下を静注可能.適用量で止痙できなければ直ちに第2選択へ進む.

➊ミダフレッサ注 1回0.1~0.3mg/kg(通常1回0.15mg/kg) 1mg/分で

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