診療支援
治療

脊髄小脳変性症
spinocerebellar degeneration
小坂 仁
(自治医科大学小児科学・教授)

●病態

・小脳・脊髄小脳路および知覚路を主とする進行性神経細胞脱落とグリオーシスを特徴とし,小脳,脊髄,末梢性の知覚障害をきたす神経変性疾患の総称であり,小児期発症するものの多くは遺伝性である(常染色体優性遺伝,劣性遺伝,X連鎖性遺伝,ミトコンドリア遺伝形式).

・次のような分子病態が考えられている.

 a)転写調節異常:CAGの繰り返し配列(ポリグルタミン)の異常伸長が原因となりクロマチン構造と相互作用することにより,転写の活性化や抑制に影響を与える

 b)カルシウムの代謝障害:カルシウムの細胞内量上昇がミトコンドリア呼吸鎖や小胞体ストレス応答に影響を与える

 c)蛋白凝集:ポリグルタミン鎖は凝集しやすい性質をもち,細胞機能障害を起こす

●治療方針

 TRH(甲状腺刺激ホルモン)に運動失調改善作用が認められるため,下記の治療が考慮される.

A.運動失調

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

➊ヒルトニン注 1回0.05mg/kg(1日最大量2mg) 1日1回 筋注ないし静注 2週間.入院例で用いる

➋セレジスト錠・OD錠 1日0.25mg/kg(最大量10mg) 粉砕して用いる 1日2回に分けて.外来例で用いる

B.その他の治療

 ビタミンE単独欠乏失調症では,ビタミンEの早期補充が神経症状の進行を遅らせる.リハビリテーション,けいれんや筋緊張亢進に対し一般的な抗けいれん薬や筋弛緩薬,ボトックス治療などが行われる.動作が緩慢でしばしば転倒をみるために保護帽を使用することがある.

 肘を固定すると細かな動作がやりやすくなることや,ゆっくりと歩行・会話するように指導する.小さな文字を書くことが難しく,時間がかかるのでテストなどに際しては配慮を求める.また進行期には胃瘻造設,非侵襲的陽圧換気療法の導入,気管切開,人工呼吸器の導入についてあらかじめ家族との話し合いが必要になる.

■患児・家族説明のポイント

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