診療支援
治療

Rett症候群
Rett syndrome
高橋 悟
(旭川医科大学小児科学・講師)

●病態

・本症は,主に女児に発症し,多彩な神経症状が年齢依存性に出現する神経発達障害である.典型例の90~95%で,X染色体上にあるMECP遺伝子に機能喪失性変異が同定される.一方,自閉スペクトラム症や知的障害と診断されている患者のなかにも,MECP遺伝子の病的変異が検出されることもある.

・このように遺伝子検査の結果が診断に直結するものではなく,本症の診断は臨床症状に基づいて行われる.

・診断基準では,以下の4項目をすべて満たすことが必要とされる.

 a)合目的的な手の運動機能の喪失

 b)言語コミュニケーション機能の喪失

 c)手の常同運動

 d)歩行異常

・以前はできていた運動機能・言語機能の退行があることが必須要件として強調されている.本症でみられる退行現象の特徴は,遅くとも5歳までには出現し,幼児期には急速に進行するが,やがて落ちついた安定期が続くという点にある.

●治療方針

 治癒を目指した有効な治療法はいまだ確立されていない.合併する症状に対する対応が主体となる.

1.てんかん発作

 患児のおよそ70%に合併し,多くは3~10歳までの間に発症する.治療では,非てんかん性の不随意運動との鑑別が重要である.

2.呼吸異常

 息止めは90%以上の患児でみられるが,持続時間は短く,治療を要しないことが多い.しかし重症例では,酸素投与や人工呼吸療法が必要となる.

3.不整脈

 定期的に心電図検査を行い,QT延長や洞性徐脈が認められたら専門医に助言を求める.

4.睡眠障害

 入眠困難・夜間中途覚醒に対して,メラトニン受容体作動薬ロゼレムが奏効する場合があるが,個人差は大きい.

5.便秘

 食事中の食物繊維・水分含量を増やす工夫をする.緩下剤を服用しても,宿便があるときはオリーブオイル1~2mL/kgの注腸が有効である.

6.空気嚥下

 胃食道逆流を合併する場合には,制酸薬やガスターを服用.激しい腹部膨満に対しては,

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