診療支援
治療

摂食障害
eating disorders
山下 洋
(九州大学病院子どものこころの診療部・特任准教授)

治療のポイント

・疾患の認識,治療への動機づけが得られにくいことから,適切な情報提供に基づく患児・家族への心理教育が重要である.

・ジェンダーバイアスなどの社会的価値観,メディアの影響,同世代集団の同調圧力,性的虐待などによる心的外傷,患児の発達障害特性や性格傾向,食欲調節に関連する生物学的な脆弱性など多因子の相互作用で発症するため,特定の「親が原因説」などはとらない開かれた肯定的な態度で対応する.

・治療初期ではやせによる認知機能の変化も考慮し,医学的問題として患児の状態を見えやすく外在化し治療環境を構造化したうえで,患児と家族が共同治療者となるよう働きかける.

・予防および回復期では医療機関,学校,家庭のつながり,支援者の多職種協働が重要である.

●病態

・摂食障害は,神経性やせ症,神経性過食症,過食性障害およびその他の摂食障害の総称である.小児では異食症,反芻症,回避制限性食物摂取症などもみられる.DSM-5ではこれらを合わせて食行動障害および摂食障害群として大カテゴリーにまとめた.

・近年では患者数の増加と初潮前に発症する低年齢化が目立ち,発症の契機や症状が多様化し非定型例の割合が増している.

・神経性やせ症は,頑固な体重減少に伴い,体重・体型に対する歪んだ認知(やせ願望や肥満恐怖)や食行動への病的な没頭(食物の回避や過度な運動など)を認める場合に診断される.小児の場合は,体重あるいは体型への異常な認知がない場合は回避制限性食物摂取症に分類する.

・神経性過食症では過食エピソード(短期間のあいだに大量の食物を食べ,その間は食べることを制御できない感覚が伴う)と排出・代償行動(自己誘発嘔吐,下剤など不適切な物質使用,過剰な運動)がみられる.過食性障害では代償行動がみられない.

・体重減少による種々の症状(やせ,産毛増生,初潮遅延,月経停止,足のむくみ)がみられる.身体診察では低体温,低血

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