診療支援
治療

チック・Tourette症
tic disorder,Tourette disorder
友田明美
(福井大学子どものこころの発達研究センター・教授)

治療のポイント

・治療は家族ガイダンス,心理教育,環境調整が基本となる.

・重症の場合,併存症へのアプローチ,認知行動療法,薬物療法も検討する.

・周囲からのからかい,いじめに対する予防,対処が重要である.

●病態

・チックとは,突発的,急速,反復性,非律動性の運動または発声である.遺伝的要因の関与が示唆されており,皮質-線条体-視床-皮質回路の異常およびドパミンをはじめとする神経伝達物質の異常が想定されている.

・4~6歳頃に発症し,時間とともにさまざまなチック症状を呈する.重症度のピークは10~12歳の間にあり,青年期の間に軽減する.

・男児に多く,Tourette(トゥレット)症における男女比は4対1程度といわれている.やらずにはいられないという抵抗しがたい感覚(前駆衝動)を伴い,チックをするとすっきりしたりほっとしたりしてこの感覚が軽快・消失することが少なくない.

・チックは不随意的なものとして体験されるが,さまざまな時間の長さで随意的に抑制できる.強迫症,注意欠如・多動症,自閉スペクトラム症の併発が多い.

表1のようなチック症のほかに,持続期間が1年以上かつ多様性の運動チックと音声チックがあるTourette症がある.

●治療方針

 まずは家族ガイダンス,心理教育,環境調整を行う.家族ガイダンス,心理教育としては,わざとやっていることではないため,やめるように厳しく叱らないことを家族に説明する.心理社会的要因が関与している場合があり,環境調整が有効な場合がある.

 重症例に対しては薬物療法〔アリピプラゾール(エビリファイ),クロニジン(カタプレス),リスペリドン,ハロペリドール,ピモジド〕を考慮する.チック症状は変動があり,薬物療法によってチックが完全に消失することは難しいため,ある程度改善が得られた場合には減量,中止を考慮し,チックがあっても困らずに生活できることを目標とする.また

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?