診療支援
治療

注意欠如(欠陥)・多動症
attention deficit/hyperactivity disorder(ADHD)
門田行史
(自治医科大学小児科学・准教授)

治療のポイント

・ADHDが生来性の脳機能障害であり,成人期まで続くことを念頭におき治療する.

・ADHD特性から,本人が生活上で困るような状況がある場合にのみ治療を要する.

・ADHDの特性を活かすことを目標とし,治療の終了自体を目指さないことが重要である.

・まずは心理社会学的治療を行い,効果が不十分であれば薬物治療を検討する.

・心理学的治療では,本人,養育者,学校への支援を包括的に行う.

●病態

・注意欠如・多動症(ADHD)は多動性,衝動性,不注意を中核症状とする生来性の脳機能障害を基盤とした神経発達症に分類される.

・有病率5~7%とされ,約1/3~1/2の症例において症状が思春期から成人まで遷延する.長期間にわたり支援がない場合は,二次障害として睡眠障害,ひきこもり,不登校を生ずるケースや,反抗性挑戦性障害,行為障害,不安障害,抑うつなどのほかの精神疾患を合併する例が多くみられる.

●治療方針

 第一に,ADHD診断基準(DSM-5)を満たしているか確認する.第二に,治療目標は決してADHDの中核症状が完全に消失することではなく,症状の改善に伴い学校や家庭における悪循環や不適応状態が好転し,ADHD特性として折り合えることである.第三に,まずは心理学的治療を行い,効果が不十分であれば治療薬を検討する.

A.心理社会的治療

 小児ADHDへの心理社会的治療では,本人への支援,養育者への支援,学校への支援を行う.以下に4つのポイントをまとめた.

1.特性を理解する

 まず保護者への支援として,小児ADHDの一般的な特徴をわかりやすい表現(例:待てない,うっかり屋さん,など)を用いて説明する.そのうえで生活のなかで気になる行動とADHD特性との関係について説明する.その後,保護者と本人の同意を得たうえで学校への支援を行い,ADHDの説明や特性への対応方法を助言する(例:情緒の安定化のためにクー

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