診療支援
治療

事故予防
injury prevention
井上信明
(国立国際医療研究センター国際医療協力局人材開発部)

A.事故は世界の子どもたちの課題

 事故とは,意図せず発生する悪い出来事であり,子どもに発生しうるものとして交通事故,転落,誤飲・窒息,溺水などが含まれる.先進国では,事故が子どもの主要死因だが,WHOの報告では,事故によって死亡する世界中の子どもたちの95%以上は,低~中所得国の子どもたちである.

B.子どもの事故予防

1.事故予防活動の概要

 効果的な事故予防活動は,事故に関するデータをもとに科学的根拠を創出することから始まる.そのうえでメディアを用いた情報発信,子どもにかかわる専門職への教育,法令制定を含む環境整備,リスク因子を標的にした啓発活動などを含む.

2.小児科医にもできる事故予防活動

 死に至る子どもの事故は生活環境でも発生しており,小児科医の役割は大きい.以下,小児科医にもできる事故予防活動を紹介する.

a.情報発信:Injury Alert(傷害速報)への投稿 「Injury Alert(傷害速報)」は,個人の医師が経験した事故を小児科学会雑誌に投稿できるシステムである(https://www.jpeds.or.jp/modules/injuryalert/).

 学術誌に掲載されることで個人の経験が効果的な情報となる.投稿事例は,担当者が状況を分析しコメントをつける.また,製品メーカー,研究機関,メディアなどへ情報提供される.この報告が契機となり,業界団体の規制作りやメーカーの製品改善につながった例が複数ある.

b.啓発活動:注意しなくてもよい環境づくりの指導 養育者の注意では事故はなくならない.効果的に事故を防ぐためには,むしろ注意しなくてもよい環境を作る必要がある.年齢に応じて発生しやすい事故は異なるため,リスクに応じた指導も必要である(表1).下記にあげた養育者に手渡せる資料も活用するとよいであろう.

 a)国立保健医療科学院:子どもに安全をプレゼント―事故防止支

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