A.外傷時の管理
捻挫,脱臼,筋挫傷などの外傷に対しRICE療法が応急処置として行われる.RICE療法とはrest(安静),icing(冷却),compression(圧迫),elevation(挙上)の頭文字を並べたもので,安静は外傷の悪化を防ぎ,冷却は炎症を抑制し,圧迫・挙上は腫脹を低減させる.そのあと患肢を良肢位に外固定して,すみやかに専門医療機関を受診させる.
B.良肢位
良肢位とは「そのまま固まっても日常生活上有用とされる肢位」のことで,手指ではボールを軽く握る格好,手関節では20度背屈位,肘関節90度屈曲で回内外中間位,肩関節では70度前外方挙上位,股関節では20~30度屈曲・外転位で内外旋中間位,膝関節は軽度屈曲位,足関節では底背屈0度が良肢位である.
C.骨折時の管理
意識・呼吸・循環状態などの全身状態を把握後,変形,運動・感覚障害,循環障害などを確認し,冷却しながらシーネ(副子)で固定し,直ちに専門医療機関を受診させる.出血時には流水で泥や汚れを流したあと,ガーゼで圧迫止血してシーネ固定後,直ちに専門医療機関を受診させる.なお外固定の固定範囲は傷害箇所の隣接の2関節を含めシーネで固定し,固定角度は良肢位とする.下肢であれば固定後,松葉杖などで免荷させて医療機関へ受診させる.
D.シーネ・ギプス固定時の注意点
シーネ・ギプス固定時には褥瘡,神経障害,循環障害に注意し,特にギプス固定後,疼痛を強く訴え,他動的に指の伸展時痛が増悪する場合には,急性コンパートメント症候群(上肢ではフォルクマン拘縮)の合併を考え,直ちに専門医療機関を受診するよう指導する.
E.頸部外傷
頸部外傷では常に脊髄損傷を伴っている可能性を前提に対処し,頸部を中間位に固定し,気道を確保し,呼吸・循環状態を確認し,意識障害,しびれや麻痺などを評価し,一刻も早く専門医療機関へ搬送する.