診療支援
治療

斜頸・炎症性斜頸
torticollis
村上玲子
(新潟大学医歯学総合病院整形外科)

治療のポイント

・筋性斜頸の場合は新生児期,乳児期には家族に育児指導を行い,経過観察する.1歳を過ぎても斜頸位や可動域制限が残存する場合は,手術を考慮する.

・炎症性斜頸の場合は原因疾患の治療と局所安静を要する.すみやかに斜頸位が改善しない場合は専門医へ紹介する.

 斜頸を呈する疾患には先天性と後天性のものがある.前者には筋性,骨性,眼性が,後者には外傷性,炎症性,痙性,腫瘍性など多彩な原因があげられる.小児整形外科外来を受診する頻度別では筋性斜頸が最多で,骨性,眼性と続く.原因検索のうえ,それぞれに応じた治療を行う.

Ⅰ.筋性斜頸

●病態

・片側の胸鎖乳突筋の線維化による拘縮が原因である.成因には諸説あるが解明されていない.生後2,3週をピークに患側胸鎖乳突筋に一致した頸部に腫瘤を認め,徐々に消退する.頸部は健側への側屈制限,患側への回旋制限を呈し,頭部変形が生じる.

・年長児では患側の胸鎖乳突筋の強い緊張がみられ,時に顔面非対称や頭部の側方偏位,代償性の脊椎側弯を呈する.

●治療方針

 1歳までに約90%は自然治癒する.新生児~乳児期には可動域制限のある頸部運動を促すための育児指導を行い,経過観察を行う.具体的には,患側に明るい方向(窓や照明)やおもちゃを置く(吊るす)位置がくるようにベッドを配置する,授乳やあやす際は患側から行う,寝ているときに頸部が患側に回旋するよう健側の肩甲骨の下にタオルを入れる,などである.

 1歳を過ぎても目立った斜頸位や可動域制限が残存する場合,顔面非対称を認める場合は手術適応となる.術式には胸鎖乳突筋の腱切り術,部分摘出術,延長術などがある.筆者は胸鎖乳突筋下端腱切り術のあと,装具装着とリハビリテーション(ストレッチ)を行っている.

Ⅱ.炎症性斜頸

●病態

・頸部周辺または全身性の炎症性疾患により斜頸を生じる病態である.原因疾患は急性感染症(上気道感染,咽頭炎,中耳

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