●病態
・小児の腰痛の原因のうち,スポーツ障害として重要であるのは腰椎分離症である.腰椎分離症は腰椎椎弓の関節突起間部(pars interarticularis,以下pars)に起こる疲労骨折であり,成長期のスポーツ選手に多発する.経年的に病態を変化させる疾患であり,その治療にあたっては,それぞれの病期や病態に応じた知識と治療が必要となる.
・腰椎pars部の疲労骨折から腰椎分離症に至る過程は,大きく分けると①初期,②進行期,③終末期に分けられ,その身体所見は病期によって異なる(図1図).parsに疲労骨折による骨吸収がhair line状にみられる時期が初期,parsに明らかな骨性gapがみられると進行期,いわゆる偽関節状態となると終末期である.
・初期分離症は単純X線では描出されないため,①腰椎後屈で増強する腰痛,②限局した棘突起の圧痛などの理学的所見を詳細にとり,それと疑って診察しないと見逃されるおそれがある.腰椎分離症は早期発見するほど骨癒合率も上昇するため,早期発見が非常に重要である.
・MRIは単純X線・CTで分離部の骨折線が明瞭になる前に,椎弓根部の骨髄の評価が可能であり,早期診断に有用である.また腰椎椎間板ヘルニアや後方終板障害との鑑別のためにもMRIを撮像することが望ましい.
●治療方針
第一に,腰痛の原因が何であるのかを正確に特定する.腰椎分離症と診断できれば病期を確認する.初期と進行期であれば骨癒合を目指す.終末期であれば骨癒合の見込みはないので「痛くない分離症」と共存して早期にスポーツ復帰することを目標とする.
A.初期分離症
原則的に骨癒合を目指す.治療の基本は2~3か月程度のスポーツ休止と硬性体幹装具着用である.これらで疼痛は改善することが多いが,安静時にも疼痛が強いときのみ鎮痛薬を処方することもある.
Px処方例
カロナール薬錠(200mg) 1回1錠 疼痛