診療支援
治療

先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)
congenital dislocation of the hip(CDH),developmental dysplasia of the hip(DDH)
伊藤順一
(心身障害児総合医療療育センター整肢療護園・副園長)

●病態

・大腿骨骨頭と臼蓋の接触がないものが脱臼,接触があるが骨頭が外方化しているものが亜脱臼,臼蓋角が高値で骨頭に対して臼蓋被覆が浅いものが臼蓋形成不全であり,これら3つの病態を含めて「発育性股関節形成不全」と定義される.

・新生児期では,麻痺や関節弛緩性の有無が診断できず,これらによって二次的に脱臼を生じているものもあり,治療法の選択に関しては原因疾患を考慮する必要がある.

・胎内で屈曲位にある股関節,膝関節が出生後に伸展位になることで,骨頭が臼蓋から後方に押し出され脱臼が生じる.

●治療方針

 月齢,運動発達,開排制限の程度,脱臼度によって治療選択を行う.

A.生後3か月まで

 患児の股関節運動を阻害しないような衣服,ベビー用品の選択を促す.また長時間抱っこをする場合は,股関節開排位でのコアラ抱っこを勧める.この時期の亜脱臼は生活指導だけで改善することも多い.

B.生後3か月以降

 生後3か月以降は,リーメンビューゲル装具(RB)による治療を行う.開排制限が強い症例では,装具装着のときは患肢が十分に動くようにベルトを調整し,夜間に痛みにより涕泣するようなら装具をいったん外す.無理な着用は骨頭壊死を招く.

 装具で整復が得られた後はベルトを段階的に緩める.早い例では12週間ほどの着用で装具を外すことができる.初回の装具装着で整復が得られない場合は,装具を外し4週間後に再装着を行う.

 開排制限が強い例,2~3回のRBの再装着によっても整復されない例は,麻酔下で徒手整復を行う.いったん徒手整復で安定性が得られれば,ヒップスパイカ(ギプス)により1週間固定を行い,その後RB+ぶかぶか装具へ移行する.偽整復位でギプス固定をすると骨頭壊死が生じる.ぶかぶか装具内で下肢運動が良好となった段階で,ぶかぶか装具を外しRBのみとする.その後,再脱臼しなければRBを終了する.

 保存療法で牽引〔OHT(over

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