診療支援
治療

うちわ歩行,そとわ歩行
in-toeing gait,out-toeing gait
西須 孝
(千葉こどもとおとなの整形外科・副院長)

●病態

・つま先を内側へ向けて歩く様をうちわ歩行,つま先を外側へ向けて歩く様をそとわ歩行という.前者は内股歩行・内旋歩行と,後者は外股歩行・外旋歩行と同義とされている.いずれも両側性の場合が多いが,片側性の場合もある.

・うちわ歩行の原因には,先天性内転足・内反足,下腿骨内捻,大腿骨内捻,過前捻症候群,麻痺性疾患などがある.

・そとわ歩行の原因には,外反扁平足,下腿骨外捻,膝関節後外側回旋不安定性,大腿骨外捻,大腿骨臼蓋インピンジメント(FAI:femoroacetabular impingement)などがある.

●治療方針

 最も頻度の高い過前捻症候群によるうちわ歩行に対しては,とんび座りの禁止と胡坐の励行を指導するが,この生活指導の有効性は証明されていない.装具療法の有効性は明らかでないため,医療経済学的見地からは推奨されない.

 機能的・整容的問題が大きく,患児と家族がともに治療を強く希望する場合に限り手術治療を行う.術式は,原因部位で問題を解決することが原則となる.

A.足部に原因があるとき

 先天性内転足・内反足によるうちわ歩行に対しては,原疾患の矯正を行う.それでも十分でないときは,足部外側支柱短縮術やこれに加えて足部内側支柱延長術を行う.

 外反扁平足によるそとわ歩行に対しては,そとわ歩行の改善目的単独で手術は行わない.外反扁平足による足部内側の胼胝・褥瘡形成が日常生活上問題となれば,足部内側支柱短縮術と足部外側支柱延長術の合併手術(第1楔状骨短縮術で切除された骨片を用いて立方骨を延長)を行う.

B.下腿骨に原因があるとき

 下腿骨内捻によるうちわ歩行や下腿骨外捻によるそとわ歩行に対しては,下腿骨遠位部での回旋骨切り術を行う.30度までの回旋であれば脛骨のみ骨切りを行い,30~40度の回旋のときは脛骨に加えて腓骨の骨切りも行う.40度以上の回旋は,神経障害や血行障害のリスクが高い

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