Ⅰ.肘内障
●病態
・手を引っ張られたあと,急に上肢を動かさなくなり受診することが多い.
・橈骨輪状靭帯が橈骨頭から脱転して生じる.
・2~3歳に多いが9歳頃まで認める.1歳以下では寝返りで,上肢が下になっただけで生じることもある.
●治療方針
受傷機転が一致し,変形や腫脹がなく,単純X線で骨折がなければ徒手整復を行う.前腕を回外(手のひらを上に)させ肘関節を屈曲し,整復時のクリックを橈骨頭に触知する.本法で整復されない場合は,前腕を回内(手のひらを下に)させ整復を試みる.
整復直後に患児が泣き,症状改善が不明の場合は10分程度待合室で様子をみて判断する.改善しない場合は骨折などの可能性もあるため,肘関節部をシーネ固定とし2~3日以内に外来で再度診察する.
■患児・家族説明のポイント
・整復後も同じ動作により再発することが10%前後ある.
・成長とともに靭帯付着部が強固となるため,再発の可能性は低くなる.
Ⅱ.上腕骨顆上骨折
●病態
・転倒や転落時に手をついて受傷する場合が多い.
●治療方針
肘関節の単純X線で健側と比較し,正面像と側面像で転位が小さければギプス固定,転位が大きければ全身麻酔下に徒手整復し,経皮的ピンニング手術を要する.
■専門医へのコンサルト
・血行障害や神経障害がある場合は早急に専門医へコンサルトする.
・転位が小さい場合はシーネ固定とし,翌日以降に専門医への受診としてもよい.
■患児・家族説明のポイント
・受診日同日に全身麻酔下に手術をする可能性がある場合は,絶飲食の指示をしておく.
Ⅲ.上腕骨外顆骨折
●病態
・転落や転倒で受傷することが多い.6歳前後に好発し骨端線損傷を伴うため,偽関節や変形治癒に注意する.
●治療方針
骨片の転位が2mm未満であればギプス固定とし,2mm以上あれば観血的骨接合術を要する.
■専門医へのコンサルト
・骨片の転位の程度や治療方針については専門医へ判断を任せるのがよ